「雲 水」(東青梅)

 JR青梅線の東青梅駅から歩いて3分ほど、住宅地のなかにひっそりと店を構えている。以前はいかにも自宅を改造したような感じだったが、近年改築されて、蕎麦屋らしいたたずまいになった。店内は木の温もりが感じられる風情、カウンター席、テーブル席、座敷席合わせて40人ぐらいは入れそうである。店内は禁煙。BGMに軽音楽を流している。
 家族だけで切り盛りしているらしく、混雑する土・日曜などは人手不足のよう。そのためか、ポットに入ったお茶はセルフサービスである。
 蕎麦粉は、店内の電動石臼で自家製粉されていて、手打ちの「もりそば」が600円(大盛り750円)である。ソバは、太さ、長さが少し不揃いだが、全般的には中細打ち。しっかりとしたコシがあり、噛んで味わうタイプ。香りは、蕎麦粉の状態の違いか、良いときと悪いときとがある。

 合わせるツユは、色濃く、やや酸を感じる。コクがあまりなく、平板な印象を受ける。もう少し薄くて、きりっとしたツユのほうが、ソバの風味が生きるように思う。
 その他の種物では、「天もりそば」(1200円)、「鴨汁そば」(800円)などがあるが、蕎麦本来の風味を楽しんでもらおうと、温かいソバは供していない。ただし、熱盛りで食べることは可能なようである。
 自ら「そば修業の店」と名乗っているように、雲水とは修行僧のことだが、まだまだこれからも精進して、さらにおいしいソバを提供してくれることを期待したい。

味3、雰囲気4、対応3、CP3 計13

評価時期 平成15年3月31日      

データ 青梅市東青梅2−10−5 0428−22−8639 11:00〜14:00(平日・土曜) 11:00〜18:00(日曜・祝日) 水曜休み

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「潮」(西国分寺)

 JR中央線の西国分寺駅から歩いて10分ほど、泉町交差点の歩道橋のすぐそばにあり、店の外壁には「八ヶ岳山麓産十割蕎麦」という大きな看板が掲げてある。照明を落とした店内は、高い天井に太い木の梁組みがあって、山岳のロッジに来ているような感じもする。カウンターが6席、テーブルが3つで16席、入り口脇には座敷もあるが、普段は使っていないようである。
 軽音楽が静かに流れる落ち着いた雰囲気なので、思わず一杯飲みたくなる。酒は「浦霞」、「黒帯」、「天狗舞」、「一ノ蔵」などの手頃な値段の地酒を揃えている。
 肴のほうはというと、だし汁がよくしみ込んだ「にしん棒」、クリーミーな「生ゆば」、焼いた石の上に載せられた薬味たっぷりの「焼き味噌」など蕎麦屋らしい酒の肴の他、壁にはたくさんの季節の一品料理が貼り出されている。いずれの品も居酒屋の料理としてかなり上質。それもそのはず、ご主人はこの店を始めるまで、長年にわたって日本料理店の板前だったそうだ。

 ソバは冷製のみを供している。「蕎麦きり」は150グラムという量で800円。「大盛」は200グラムで1100円、「おかわり」が600円である。高坏型の笊に盛られたソバは、風味豊かな極細切りで、やや粗挽き。エッジがしっかりと角ばっていて、喉越しよくおいしい。
 繊細なソバの味を消さない薄めのツユも、甘辛のバランスがよく、ソバとの相性が抜群である。薬味に刻みネギがなく、本ワサビのみというもこのソバをおいしく食べるためのこだわりだろうか。
 店の出入口近くには古瓦や仏像が置かれていて、すぐ近くにある旧跡、武蔵国分寺を偲ばせる。ご主人自らも、趣味で仏像を彫っているという。ただの蕎麦屋ではない、奥深さを感じさせる店である。

味5、雰囲気4、対応4、CP3 計16

評価時期 平成18年2月19日

データ 国分寺市西元町2−18−11 042−359−2898 11:30〜14:00(土日祝15:00) 17:00〜21:00 火曜休み

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「やくも」(調布)

 東京都内では数少ない出雲蕎麦の店である。京王線の調布駅から歩いて5分ほど、旧甲州街道から少し入ったところにひっそりと暖簾を出している。店内もこじんまりとしていて、15人も入ればいっぱいになってしまう。
 ここでは、まず「獺祭」、「王禄」などの銘酒を飲みながら、出雲名産の「野焼き」、「野あげ半」などの肴を味わいたい。竹輪やさつま揚げと同じような魚の練り物である。
 また、「玉子焼き」、「鴨ねぎ焼き」など蕎麦屋定番のつまみをはじめ、「たこわさ」、「ワサビの茎の醤油漬け」、「おでん」など多彩な酒の肴もあって、ついつい酒が進んでしまう。
 とりわけ、甘味のない「玉子焼き」の上品な味わいは特筆すべきだろう。

 ソバのほうは、「割子そば3枚」が840円、普通の「もりそば」もある。やや黒っぽく細打ちのソバは、出雲蕎麦らしい、しっかりとしたコシがある。ゴワゴワした食感だが、しっかり噛んで食べると、口中に旨味が広がる。
 ツユは薄めで、甘辛い。もう少しコクがあってもよいと思うが、かえってソバの味を引き立てているようにも思う。
 地元にもしだいに定着してきたようで、コストパフォーマンスのよさから、お昼時には順番待ちの行列ができている。
味4、雰囲気3、対応3、CP4 計14

評価時期 平成16年4月12日

データ 調布市布田1−26−12 0424−99−3777 11:30〜15:00 17:30〜22:30 月曜・第2・4日曜休み

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「地球屋」(三鷹市大沢)

 個性的な蕎麦屋である。「地球屋」という大胆な、蕎麦屋らしからぬ屋号からして変わっているが、店のロケーションや雰囲気も、他の東京の蕎麦屋には見られないものである。
 場所は、東京にいることを忘れてしまうような自然環境豊かな野川公園のすぐそば、湧水の流れる野川のほとりにある。民家を改造したというより、外見は小さな一戸建ての住宅そのものである。狭い玄関から中へ入ると、左手に8人ほど入れる座敷席、少し奥には板張り床の6人ほど座れるテーブル席がある。窓に向かったテーブル席からは、ガラス越しに野川ののどかな風景を眺めることができる。
 こうした雰囲気の中では、まずはゆったりと厳選された日本酒やビールをソバ前に楽しみたい。すぐ近くの川べりで摘んだセリやタケノコ煮、山ウド煮、ゼンマイ煮、焼き蒲鉾、だし巻き玉子などを少しずつ盛りつけた小鉢をつつき、春の平日昼下がり、外の新緑を眺め、小鳥のさえずりと川のせせらぎを聞きながら飲む酒の味は格別である。

 冷製のソバは、小ぶりの編み笊に盛られた「ざるそば」が1枚1000円。先の小鉢のついた「おきまり」の場合は、1750円(大盛は1950円)。みずみずしい極細打ちのソバは、風味豊かでおいしい。薬味は辛味大根とネギ。ソバツユは、やや薄めで辛口、とても洗練されている。ソバとの相性もよい。
 また、温かいソバでは、「湯もりそば」というのが珍しく、お薦めである。釜揚げのような湯だめソバで、自分で生醤油をかけて味を調整しながら、薬味の花鰹節と辛味大根オロシとともに食べる。蕎麦湯とソバを一緒に食べているような感覚だが、「かけそば」とはまた違った味わいでよい。蕎麦本来の風味も際立つような気がする。
 店内禁煙、携帯電話使用不可、撮影禁止、子供はご遠慮ください、静かにしてくださいなど注意書きが多いが、狭い店なので仕方のないところ。かえって、一人静かにソバと酒を楽しむには、好ましい空間であるといえるかもしれない。

味4、雰囲気4、対応3、CP3 計14

評価時期 平成16年4月12日

データ 三鷹市大沢6−2−19 0422−39−3839 11:30〜売切まで 水曜・第3木曜休み

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「義 蕎」(国分寺)

 国分寺駅北口の商店街のはずれに、さりげなく店を構えている。それほど広くない店内は、いくつかに仕切られたテーブル席のみで、20人も入れば満席だろう。一角では、小さな電動石臼がゆっくりと回転している。
 平成14年の夏から店名が、「やぶ久」から「義蕎」に変わり、長野県黒姫高原産の霧下蕎麦粉にこだわるようになった。「せいろ」は800円(追加せいろは500円)。細打ちと太打ちがあって、いずれも同じ粉で打たれているようで、細打ちはしっかりとしたコシで蕎麦の風味よく、太打ちはけっこう太さがあり噛んで味わうソバである。
 合わせるツユは、洗練されていてバランスがよい。ただ、太打ちにはうまく絡まないのが残念。
 ソバはすべて冷製のみを供し品数は少ないが、「鴨汁」、「とろろ」、「辛味大根」などいずれも素材の産地にこだわる品々。「天せいろ」に使う「細巻き海老」や「穴子」など江戸前の天種も、築地で新鮮なものを仕入れている。

 そば前酒は、出羽桜の「桜花吟醸」、朝日酒造の「越州」をはじめ、全国地酒が各種取り揃えられている。本格焼酎もある。
 酒の肴には、味わい濃厚な八丁味噌を使った「にしん味噌煮」や「たたみいわし」、「豆腐の味噌漬け」、「穴子白焼き」、「出汁巻玉子」、「きゅうりの糠漬け」などがよい。
 そしてやはり、純正ごま油100%で揚げるサラっとした「天ぷら」をつまむのがよい。その日仕入れたメゴチ、ギンポウ、キスなど新鮮な江戸前の魚、タラノメ、フキノトウなど季節の野菜、充実した品揃えである。
 若い女将さんの対応もさわやかで、気持ちよくおいしいソバと酒を味わえる店である。

味4、雰囲気4、対応4、CP3 計15

評価時期 平成16年3月18日

データ 国分寺市本町2−3−9 042−326−6231 11:30〜14:30 17:30〜23:00 不定休

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