柏 屋(長野)

 JR長野駅から歩いて数分ほどのところにある気さくな雰囲気の蕎麦屋。店構え、店内ともごく普通の町場の蕎麦屋のようだが、おいしい手打ちソバを供している。
 以前は、けっこう太打ちの田舎風のソバを出していたように記憶しているが、最近はやや細めで、けっこう洗練されてきた感じがする。
 お薦めは、やはり冷製の「もり」(600円)、「大もり」(750円)など。見た目にもみずみずしいソバで、蕎麦の香り高く、しっかりとしたコシ、喉越しもよい。
 ツユは、鰹節の香りが際立っているが、やや平板な味わいという印象を受ける。

 「鴨せいろ」(900円)もお薦めである。良質の鴨肉が使われていて、この鴨からしみ出したダシが、つけ汁に溶け込んでいてまことに美味である。
 また、ソバを食べる前に「天狗舞」、「〆張鶴」、「天法」などの銘酒で一杯やるのもよい。酒の肴も、蕎麦屋らしい品がひととおり揃っている。
 ここ柏屋は、際立った特徴のある蕎麦屋ではないが、さりげなくおいしいソバを食べさせてくれる店である。
味4、雰囲気3、対応4、CP5 計16

評価時期 平成14年11月30日

柏屋(長野県長野市末広町1356−2 026−226−6982 11:00〜15:30 17:30〜20:30 月曜休み)

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たけや支店(鎌倉)

 かつては、賑やかな鎌倉のショッピング・ストリートである小町通り沿いにあったと記憶しているが、いつの間にか喧騒を逃れるように、小町通りから少し脇道に外れた場所に移転し、ひっそりと暖簾を出している。
 それほど広くない店内は、入って左手に打ち場と厨房、右手に4人掛けのテーブル席が並ぶ。さらに奥には、6名分の座敷席も用意されている。落ち着いた色調の塗り壁と木製の調度品などからも、ゆっくりとソバを楽しめるような配慮が感じられる。店内禁煙、子供連れ入店禁止というのも、仕方のないことである。
 お品書きは、「せいろ」、「天せいろ」、「かけ」、「天ぷらそば」の4種類に限定されている。いろいろな種物のソバを食べたい向きには、物足りないかもしれないが、純粋にソバの味で勝負したいという店主の気持ちのあらわれであろうか。

 蕎麦本来の風味を楽しむなら、やはり「せいろ」(700円、大盛950円)を味わいたい。笊に盛られたみずみずしいソバは、しなやかな細打ち。蕎麦粉9割以上で打たれているそうだが、香り高く、ツルツルと喉越しもよい。
 合わせるツユは、ソバの風味を損なわないように、薄めの辛口に仕上がっている。
 また、「天せいろ」(1800円)は、「せいろ」に海老2匹と野菜数種類が付く。天ぷらは、胡麻油の風味が香ばしくておいしい。
 なお、店名は「たけや支店」だが、本店がどこかにあるという話は聞いたことがない。古都鎌倉にふさわしい、風情のある蕎麦屋である。

味4、雰囲気4、対応4、CP3 計15

評価時期 平成17年5月10日

たけや支店(神奈川県鎌倉市雪ノ下1−5−10 0467−22−1159 11:00〜18:00 水曜休み)

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鎌倉一茶庵(鎌倉)

 古都鎌倉の鶴岡八幡宮の門前に風格ある店を構える一茶庵系の蕎麦屋。名店、足利一茶庵の暖簾分けの店としては古いほうで、かつて鎌倉文士たちも集まったいわれている。また、ここで修業した職人が、新たな店を出しているケースも少なくない。
 店内は、テーブル席と喫煙と禁煙に分かれた広い座敷が二部屋あって、座敷に座れば、中庭を眺めながらゆっくりとソバを楽しむことができる。ただし、場所がら土日は混雑するので、少しあわただしい。
 座敷に腰をおろすと、ソバだけ食べて帰るのはもったいない気分になり、一杯飲みたくなる。日本酒は、珍しい群馬の「群馬泉」を置いている。他に、「満寿鏡」など数種類の冷酒がある。酒の肴は、エビやホタテの風味が際立った「自家製さつま揚げ」や定番の「板わさび」、「そばみその杉板焼」、「ひな鳥焼」などがお薦めである。

 「せいろ」(945円)は、しゃきっとしたコシのある中細打ち。蕎麦の風味はまあまあ、喉ごしがよい。「田舎そば」(945円)は、「せいろ」と同じ粉を使っていると思われるが、太く、硬く打たれているので、噛んで食べれば口中に蕎麦の風味が広がる。
 やや甘味が強い印象も受けるが、一茶庵らしいコクのあるツユとの相性も悪くない。
 また、「三色そば」(1470円)は、この「せいろ」か「田舎そば」に、「茶そば」、「けし切り」などの変わりそば2種類を盛り合わせたもの。一茶庵の伝統を感じさせる味わいである。
 なお、東京の青山にある「くろ麦」は、ここの系列店で、ほぼ同じメニュー構成になっている。

味3、雰囲気5、対応4、CP3 計15

評価時期 平成17年5月10日

鎌倉一茶庵(神奈川県鎌倉市雪ノ下1−8−24 0467−22−3556 11:00〜19:30 木曜休み)

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桐屋権現亭(会津若松)

 桐屋は、会津若松で30年の歴史のある、全国的にも知られた蕎麦屋。地元の会津高原で収穫した蕎麦の実を自家製粉して打ち上げる、こだわりのソバを味わうことができる。その桐屋本店が、平成15年6月末、約2年ぶりに、桐屋権現亭としてリニュアルオープンした。
 店内は、改築以前にくらべてモダンな印象、東京など首都圏の蕎麦屋を意識したと思える洒落た造りである。1階は広々としたスペースに大テーブルが数か所に分けられ配置。炭焼き場とその背後の日本酒冷蔵庫を囲む、カウンター席もある。2階は予約客用の座敷席があるようだ。
 BGMにはクラシックや軽音楽が流れ、「手打ちそば、地酒、旬菜」のキャッチフレーズどおり、ゆっくりと腰を据えて、地酒と肴を楽しみ、最後にソバを手繰るには好ましい空間となっている。

 ソバ前の日本酒は、会津の地酒を中心に約20種類。以前は地元の末廣酒造のものだけだったが、「飛露喜」、「泉川」、「花春」、「会津娘」などの他、県外の福井「黒龍」、愛知「醸し人九平次」なども置いている。ガラスのコップまたはお銚子で供され、値段も良心的である。
 酒の肴は、旬の魚の刺身、しゃも焼とりをはじめ多彩。「トマトとクリームチーズのポン酢和え」、「アボガドのワサビ醤油」、「モッツアレラチーズのオーブン焼き」などの蕎麦屋としては異色の料理もメニューに載っている。
 これらの酒と肴だけでも十分満足できるのだが、仕上げのソバも以前と同じく、「飯豊権現そば」(1500円)、「会津頑固そば」(1300円)、そして普通の「ざるそば」(800円)、さらに最近話題のダッタン蕎麦粉を使った「会津薬師そば」(1300円)が用意されている。ある程度飲んだあとには、蕎麦の風味が高い「会津頑固そば」をお薦めしたい。
 料理人、サービスとも若いスタッフが多くなり、テキパキとした動きは好ましい。今後は、お客への気配りもだんだんと勉強して、がんばってほしい。

味5、雰囲気4、対応4、CP3 計16

評価時期 平成17年12月27日

桐屋権現亭(福島県会津若松市上町2−34 0242−25−3851 11:00〜15:00 17:00〜23:00 水曜休み)
ホームページ http://www.kiriyasoba.co.jp/

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桐屋夢見亭(会津若松)

 会津若松市の中心街から、少し離れた慶山という地区にある、平成7年にオープンした桐屋の2号店である。奥会津の旧家を移築して店舗としている。太い柱に梁、高い天井は開放感があり、田舎家に招かれたようでホッとする。こういう環境で食べるソバの味は、やはり格別である。
 ここでは、やはりまず「夢見そば」(530円)をいただきたい。作家の村松友視氏が命名したというこのソバは、木のお椀に冷水を張ったところにソバ切りが浮かぶシンプルなもの。冷水で引締ったコシのあるソバは、蕎麦本来の風味が際立ちすばらしい。香り高く打たれたソバでなければ、この究極の食べ方はありえないだろう。

 「飯豊権現そば」(1500円)は中細打ち、やや透きとおって感じの、しっかりとコシのある上品なソバ。一番粉を使用して打たれているので、口中で滋味が広がる。
 また、「会津頑固そば」(1300円)は、同じく中細打ちながら、やや茶色いソバ。石臼挽き蕎麦粉十割で、蕎麦の香りがとても高い。いずれも甲乙つけがたく、会津のソバの特徴を知るためには、双方を食べくらべたいところである。合わせるツユも洗練されていて、ソバの味を決して邪魔しない濃さだ。
 そば前酒として、末廣酒造で造ってもらっているオリジナル大吟醸「会津頑固」、純米原酒「飯豊権現」、純米吟醸「蕎匠」などがよい。酒の肴には、「青ばた豆腐」、「にしん漬け」、「こづゆ」などの会津郷土料理が用意されている。
 ソバの味をじっくりと楽しむなら、やはりこちらの「夢見亭」がよさそうである。

味5、雰囲気5、対応4、CP3 計17

評価時期 平成14年12月27日

桐屋夢見亭(福島県会津若松市慶山1−14−52 0242−27−5568 11:00〜15:30 16:30〜20:00 火曜休み)
ホームページ http://www.kiriyasoba.co.jp/

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隆仙坊(郡山)

 JR郡山駅から開成山公園方面へと延びるさくら通りを10分ほど歩いたところ、住宅地の中に、一軒家の風情あるたたずまいで店を構えている。玄関で靴を脱いで店内へ入ると、飲食店というより、古い民家を訪れているような感じで、船箪笥や柱時計などアンティークな調度品があちらこちらに置かれている。BGMには環境音楽。大テーブルを囲む掘り炬燵式の板座敷といくつかの座卓が配置された畳座敷の部屋があって、いずれもゆったりと酒と肴、ソバを楽しむことができる。
 ソバ前の酒は、新潟の「越の寒梅」、「清泉」、「八海山」や福島の「飛露喜」など。錫製のチロリに注がれた形で供される。合わせる肴は、「そば田楽」、「そば焼きみそ」、「そば豆腐」、「そば刺」などの蕎麦料理や「にしん」、「生ゆば刺」など。蕎麦の実とネギがたっぷり入った「そば焼きみそ」は香ばしくとてもおいしい。「生ゆば刺」も濃厚な味わいでよい。

 メインのソバの方は、「うすずみ」と呼ばれる「せいろ」(800円)の他、「白妙」、「茶きり」、「けしきり」など季節の変わりソバを供している。「うすずみ」はその名のとおりの色の上品な細打ち、コシを残した茹で方で、香りほどよく喉越しもよい。合わせるツユは、やや醤油味が勝っている感もあるが、洗練されていて、ソバとの相性は悪くない。
 変わりソバの中では、「けしきり」(1000円)が香ばしく、ほのかな甘味があってよい。やはり細打ちで、「白妙」に打ち込んでいるようだ。また、衣サクサクで中身の小海老と小柱の旨味が生きている「天かき揚せいろ」(1700円)もよい。添えられている揚げた「そば田楽」も絶品である。
 夜は「蕎麦彩膳」というコース料理もあり、この店の料理の奥深さを堪能することができる。地方の蕎麦屋としては珍しい、趣のある雰囲気とこだわりを持った貴重な店である。

味4、雰囲気5、対応4、CP3 計16

評価時期 平成17年12月27日

隆仙坊(福島県郡山市清水台2−6−5 024−932−0194 11:00〜15:00 18:00〜21:00 水曜休み)

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