厳選!全国のおいしい蕎麦屋
善光寺門前近くにあり、蕎麦処の信州では、まずお薦めしたい蕎麦屋である。質量ともに、食べる人を魅了するソバは、東京など首都圏のいわゆる蕎麦通ぶった店のソバとは一線を画す。
ボリュームたっぷりに盛られた「もり」は1枚550円(大盛りは850円)。みずみずしく輝く細打ちのソバは、蕎麦の香り高く、喉ごしがよい。やや薄めの、鰹ダシのきいたツユとの相性も抜群である。薬味に添えられる市販の練ワサビは使わないほうがよい。
「鴨南蛮」や「鴨せいろ」が950円というのも非常にお値打ちである。大ぶりの鴨肉と長ネギがたっぷり入った鴨汁は、やや甘い感じもするが、鴨の野性的な味わいと鴨からしみ出たダシ汁の旨みを堪能できる。
また、「そば定食」(1000円)といって、もりソバにヒレカツとご飯、漬物がセットになった一品があるが、このヒレカツが予想以上においしい。蕎麦専門店でありながら、ソースかつ丼をメニューに載せるだけのことはある。空腹の時には、ありがたいメニューである。
店内は、ソバの香りを楽しむことができるように、禁煙となっている。そして、ここのソバの真髄を知りたければ、新蕎麦の季節に訪れるとよいだろう。新蕎麦のすばらしい風味をきっと楽しめるに違いない。
味5、雰囲気3、対応4、CP5 計17
評価時期 平成17年12月30日
元屋(長野県長野市大門587−3 026−232−0668 11:00〜14:30 16:30〜20:00(水〜土))
以前は店が、善光寺へ向かう中央通り沿いにあったが、平成16年に現在の場所に移った。蕎麦屋激戦地区からは少し離れたが、太田屋の原材料へのこだわりは相変わらずで、おいしいソバを供している。
蕎麦粉は、奥信濃の寒冷地、飯山の自社直営の蕎麦畑で収穫した実を、店内の電動石臼で自家製粉している。
お薦めは、一日40食限定の「十善そば」(950円)と称する蕎麦粉十割のソバ。色は黒っぽく、やや太さ長さが不揃いだが、全体的には中細打ちで、みずみずしい。風味豊か、ややざらつく食感ながら、喉越しのよいおいしいソバである。
合わせるツユは、辛口薄めで、鰹ダシの香りが際立っている。ソバの香りと味を消さないので、相性は非常によい。
付け合せに自家製の辛子茄子など小鉢が付き、おいしいのだが、ソバを食べている最中は口にしないほうがよい。ソバ湯を飲むときに一緒に楽しみたい。
また、一般の「もり」(550円)は蕎麦粉八割で打たれ、こちらも信州ソバとして満足できる味わいである。
店内は、調度品が新しいためか、以前にくらべて、かなり明るくなった印象を受ける。テーブル席と小上がりの座敷があって、けっこう広々としている。2階には宴会用の座敷もある様子。新たなスタートを切った、穫りたて、挽きたて、打ちたて、茹でたてを信条とする蕎麦屋である。
なお、手打ちソバのクール宅急便も行っているので、自宅に取り寄せて、同じおいしいソバを楽しむこともできる。
味4、雰囲気4、対応4、CP4 計16
調査時期 平成17年7月25日
太田屋(長野県長野市鶴賀田町1505−8 026−232−6348 11:00〜18:30 木曜休み)
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善光寺へ向かう中央通り沿いに、平成14年にオープンした店である。さすがに、蕎麦屋の激戦地区に開店した店、なかなかおいしいソバを供している。表には十割ソバを強調する幟がはためいている。ここは、信州黒姫山と飯綱山の裾野に広がる蕎麦畑から収穫した、いわゆる霧下蕎麦粉の十割手打ちがウリである。
「十割そば」が1枚500円、2枚の「重ねそば」が700円。けっこう黒っぽい細打ち、やや不揃いな印象を受けるが、風味はかなり豊かである。特に、新蕎麦の時期に食べたソバの香りは印象的で、忘れがたい。その後は、その日によって香りの強いときと弱いときがあるようだ。
また、白い更科粉を使った「更科そば」は700円。みずみずしく白く輝くソバで、見た目にも美しい。やや短く切れているが、ほのかな甘味が上品に感じられ、コシも強く喉越しなめらかである。
いずれも冷水でしっかり締められている。
これらのソバに合わせるツユは、やや甘めでまったりした感じが気になるが、ソバの風味を生かす濃さで、相性は悪くない。
「十割」と「更科」双方を楽しみたい人のために、「二色そば」(1000円)というのも用意されている。食べくらべることで、それぞれの特徴を実感することができるだろう。
その他、サイドメニューとして、「そばがき」(300円)、「そばいなり」(200円)、ボリュームある「山菜てんぷら」(300円)などもあって、お値打ちな値段で楽しむことができる。
接客などの面では、まだまだ改善の余地はあるが、廉価でおいしいソバを提供しようとする姿勢は評価したい。今後の展開を見守っていきたい蕎麦屋である。
味5、雰囲気3、対応3、CP5 計16
調査時期 平成17年11月22日
大善(長野県長野市大門町46−1 026−233−5002 10:30〜16:00 土日・祝日は10:00〜16:00)
かつて食通で知られる池波正太郎も通ったという名店だが、けっして敷居の高い店ではない。気さくで家庭的な雰囲気は、多くの地元の客にも愛され、昼時はとても混雑している。
この店のソバの特徴は盛りの量。ソバはしっかりとした食事であるというポリシーが感じられる。しかも良心的な価格設定で、大盛800円、並600円、中550円、小500円という4段階が用意されている。「並」で普通の店の三倍くらいのボリューム。「大盛」に至っては、これ以上盛るとザルから崩れ落ちるという限界まで盛られている。
蕎麦の風味を十分に感じることのできる太打ち、硬めのソバは、しっかりと噛んで食べるので、確かに食後の満腹感がある。
合わせるツユは、鰹ダシが利いていて薄め。ソバの風味を十分生かしてくれる。薬味はネギと大根卸しと市販練ワサビだが、ワサビはなくてもよい感じがする。
2階には座敷もあるが、1階のテーブル席はかなり窮屈な感じ。しかも店員がバタバタと動き回るので、落ち着いてソバを楽しむ雰囲気ではない。
それでも、コスト・パフォーマンス最高。お腹を空かして訪れたい店である。
味4、雰囲気3、対応4、CP5 計16
評価時期 平成17年5月14日
刀屋(長野県上田市中央2−13−23 0268-22−2948 11:00〜18:00 日曜休み)
松本市郊外にある保養地、浅間温泉の温泉街の中にある本格的手打ち蕎麦屋である。明治27年創業の老舗とのことだが、現在の四代目のご主人の熱意と努力により、当世風のおいしいソバと酒と肴を供する店として営業している。
店内は、手前に小上がりの座敷席、奥にテーブル席が配置されている。室内の調度品も風情があり、環境音楽のBGMと相まって、落ち着いた空間を演出している。
ここで打たれる冷製のソバは、「もり」(750円、大盛1100円、一人前1450円)と「十割」(1000円、大盛1500円、一人前1950円)の2種類。「もり」は、中細打ちで香りもまあまあ、エッジがしっかり、コシのあるソバでおいしい。一方、「十割」の方は、もう少し黒っぽく、外皮が時々ざらつく食感。同じ中細打ちだが、エッジもさらに立っていて、蕎麦の風味が強い。
合わせるツユは、信州にはよくある、やや甘めで薄いツユ。たっぷり浸しても、風味を損なうことがないので大丈夫だ。
また、そば通向けには、限定数量の「水そば」(950円)もあり、シンプルにソバ本来の風味を楽しむことができる。
酒と肴も充実している。「そばのうす焼」、「そばのさしみ」、「そばの岩石揚げ」、「そばのぴざ」など蕎麦料理が名物。その他、霜降りで上質の「馬さし」、「くきわさび」、「わらびおひたし」、「きのこおろし」など信州らしい酒の肴が揃っている。「天ぷら盛り合わせ」は海老2本と野菜がサラッと揚がっていて、これも肴にはよい。
酒は長野の地酒「北アルプス」。大き目のガラスのコップでたっぷりと供される。夏は、サッポロ生ビールもよい。
温泉街の店というと、一般的には、観光客目当てのがっかりする食事処が多いが、この「あるぷす」は、類まれな良質店である。
味4、雰囲気4、対応4、CP4 計16
評価時期 平成17年7月24日
あるぷす(長野県松本市浅間温泉3−1−13 0263−46−1471 11:30〜15:00 17:30〜21:30 水曜休み)
ソバ通の間では広く知られた名店。土日は、東京などの都心から多くの人が車で訪れるので混雑する。タイミングが悪いと1時間以上待たなくてはならないこともある。しかし、待っても食べるだけの価値のあるソバといえる。メニューにあるのは「ざる」と「田舎」の二種類のみ。どちらも一枚840円である。
「ざる」は洗練された細打ちで、香り高く滋味あふれる究極のソバ。とりわけ新蕎麦の頃は、薄緑がかっていて、みずみずしく、輝くようなツヤである。「田舎」は太打ちの黒っぽいソバ。ほどよい硬さで味わい深い。ソバの味もさることながら、ツユも絶品である。鰹節の香り高く、しっかりしたコクがあって、ソバとの相性もよい。
これらのすばらしいソバを食する前に、「菊姫」、「豊の秋」、「大雪渓」などの大吟醸などを飲みながら、杓文字にのった焼き味噌を味わうのもよい。甲斐駒ケ岳や八ヶ岳を望む恵まれた自然環境のなかで
味わうおいしいソバは、わざわざ訪れた者に幸福な時を過ごさせてくれる、贅沢な食のひとつである。
調査時期 平成12年12月24日
翁(山梨県北巨摩郡長坂町中丸2205 0551−32−5405 11:00〜15:00 月曜・火曜休み)
日本全国に数ある一茶庵系の蕎麦屋の総本山である。ここで修業した職人が独立して店を出し、ソバ通の間でもてはやされる蕎麦屋になっているケースも多い。
平成12年に、足利市役所にさらに近い、現在の場所に新装開店し、本店らしい風格のある建物になった。店内へ入ると、高級割烹料理店のような回廊が続き、広い蕎麦打ち場をガラス越しに眺めることができる。
客席は、中庭を囲むテーブル席や座敷席など、いくつかの部屋に分かれていて、落ち着いた雰囲気である。
一茶庵の創始者、片倉康雄氏の記念室として「友蕎亭」という部屋も設けられた。ここには、片倉氏自作の蕎麦道具や掛物、書籍などが展示されている。
ソバは「せいろ」、「田舎」、「さらしな」とも650円、大盛が950円。それぞれの蕎麦粉の特質を生かした老舗ならではのおいしいソバである。「せいろ」は蕎麦の香りが高く、
喉ごしのよい細打ち。「田舎」は太くて噛みごたえのあるしっかりした味わい、「さらしな」は真っ白な極細、甘味があって繊細な味わいである。
また、「けし切り」、「茶そば」、「ゆず切り」などの変わりそばを盛り合わせた「三色そば」、「五色そば」もあって、一茶庵らしい多彩な味わいのソバを楽しむことができる。一茶庵系ソバの原点を知るうえでも、ぜひ訪れてみたい蕎麦屋である。
調査時期 平成13年9月3日
一茶庵本店(栃木県足利市柳原町862 0284−40−3188 11:30〜14:30 16:30〜20:00 水曜・第3木曜休み)