おお西(上田)
以前は、上田市内を通る国道18号線沿いに店を構えていたが、平成13年3月2日に、上田市街の旧家の町並みが残る地区に店が移転した。場所は変わったが、古い商家と思われる建物をそのまま使用しているので、店内は以前と同じ雰囲気を保っている。
黒光りする柱や梁の風情はそのまま。新たに、座敷へ上がる前の広いタタキの部分には、隣接する「保命水」と呼ばれる井戸の水を引き入れ流している。薪をくべた暖炉もできた。こうした店内の風情は、申し分なく、落ち着くことが出来る。
「そば打ちの美学」という本を出版している、こだわりの主人が打つソバは、基本的には3種類。一番粉を使った「更科そば」、二番粉を使った「挽きぐるみそば」、三番粉を使った「田舎そば」(各1050円)。すべてつなぎを使わない生粉打ち、みずみずしい細打ちソバである。
それぞれの蕎麦粉の特徴も活かしていて、「更科」はほのかな甘味をもった美しい白いソバ、「挽きぐるみ」は香り高く滋味あふれる最もバランスのとれたソバ、「田舎」は野趣あふれるゴワゴワとした食感の深い味わい黒いソバとなっている。これら3種類のソバを一度に比較しながら味わうことのできる、「三種もり」(1680円)というのも用意されている。
また、近年、店主が開発したという「発芽そば切り」(1575円)は今注目のソバ。蕎麦の実を発芽させてから挽いた蕎麦粉を使用し、モチモチとした独特の食感をつくり上げている。荒挽きでやや太めのソバは、甘味と旨味が口の中に広がって、新たな感動を味わうことができる。
さらに「だったんそば」(半量630円)までメニューにのる、これら多彩なソバに合わせるツユは、やや濃い目で、鰹ダシがしっかりと利いている。
地方の蕎麦屋にしては、全般的に値段が高めだが、ソバの味わいと店内の雰囲気は、見過ごすことのできない店である。
味5、雰囲気5、対応3、CP3 計16
評価時期 平成17年5月14日
おお西(長野県上田市中央4−9−8 0268−24−5381 11:30〜14:00 不定休)
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名古屋の住宅街のマンションの1階というロケーションからは想像できない、ソバ食い好みの実力店である。
店内に入ると、右手に多くの職人が立ち働く厨房、左手には、ロビーのようにゆったりと配置された豪華な椅子が並んでいる。奥にも座敷席があるようだが、絶対的な席数は少なく、かつ相席にはしないので、お昼時は順番待ちになることが多い。
分厚い座布団の置かれた椅子席に腰を下ろすと、やはりビールや各種地酒をソバ前に飲みたくなる。酒の肴には、名物の名古屋コーチンの「玉子焼き」がよい。他店では見られないような、丸い陶器で蒸し焼きにされたカステラのような玉子焼きである。その他、愛知県産の「じゃこ天」、「目光りの縄文干し」、利尻の「蒸しうに」、「穴子の白焼き」などこだわりの酒の肴が用意されている。
メインのソバのほうは、やはり冷製がよい。「せいろ」(500円)を注文すると、まず薬味三点が運ばれてくる。自分でおろす本ワサビ、たっぷり盛られた辛味大根おろし、そして七味唐辛子である。個人的には、辛味大根おろしを好むが、けっこう辛いので、あまりたくさんツユに入れてはいけない。
せいろソバは、細打ちで、コシを残した茹で加減。香りもなかなかよい。ボリュームは少量なので、2枚は食べないと物足りないかもしれない。ツユは、やや甘めで濃い目である。
また、数量限定であるが、蕎麦粉十割の「石臼手挽きせいろ」(1000円)というのもある。極細打ちで、短く切れてはいるものの、蕎麦の風味は抜群である。ツユは、一般の「せいろ」と異なり、ソバの繊細な味わいを生かせるように、薄い辛口味。さすがのこだわり、見事な相性である。
その他、「天せいろ」の天ぷらのかき揚もおいしい。良質なプリプリした小海老の味わいを楽しむことができる。
名古屋にある本格的蕎麦屋としては、はずすことのできない1軒である。
味4、雰囲気5、対応5、CP3 計17
評価時期 平成16年6月2日
春風荘(愛知県名古屋市中区千代田3−31−20 052−331−5075 11:00〜20:00 木曜休み)
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草 宿(東根)
さくらんぼの産地である、山形県東根にある蕎麦屋。鉄道で行くと、山形新幹線のさくらんぼ東根駅から30分近く歩くことになる。山形そば街道の多くの店と同じく、車で訪れたほうがよさそうな場所である。
立派な庭園のある、自宅を一部改造したと思われる店構えはなかなか。店内は、入って右側が打ち場と調理場、左側にテーブル席が少しある。さらに進むと、奥に広い座敷があり、コの字型に大きな座卓が配置されていて、ほとんどの客はここでソバを味わうことになる。
「古代そば」と命名された板ソバは、普通盛が700円、大盛が1200円。普通盛でもけっこうボリュームがあるが、大盛は横幅の長い大きな箱板に、底がまったく見えないように太めの田舎ソバが敷き詰められている。箸をつける前は、食べきれるかと不安だが、山形ソバにしては、それほど硬くなくなめらかな口当たりなので、あきることなく食べ切ることができる。 地元産の玄蕎麦を自家製粉したというソバは、風味豊か。ツユは、少し鰹節の香りが強い感じだが、ソバとの相性はよい。
食事として、しっかりとソバを食べるには、とても好ましい蕎麦屋である。
調査時期 平成13年7月7日
草 宿(山形県東根市大字東根甲8350 0237−42−4848 11:00〜14:30 17:30〜19:30 水曜休み)
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