32歳 女
性 覚
悟 「fujiko」さんの夢
自分の家の1階から南の空一面に、周りの山の高さほどの大津波を見る。
恐怖を感じたけど 既に遅い と覚悟した。周りには人は感じられない。
母1人居ると
感じてはいたけど姿は無い。どんどん押し寄せてくる。
家の中に居るのに波が頭上に見える。
完全に覚悟した。助からないと
声も出さない、逃
げようともしない。周りの音が消える。
呑み込まれる瞬間は記憶が無い。目をつぶった状態のよう。
次
の瞬間目を開けたら、家の天井や壁が
外れたり、歪んだりしてる程度。
水浸し。
それでも、周りに人を感じられない。1人で状況
を確認する。
心では、母を気にしていたけど、確認しないで目が覚めた。
大丈夫だと思ったのかもしれない。
何故自分が助かったのか。覚悟は出来ていたのに。未練はない
と。
あの大きな高さの波が、すごい勢いで押し寄せるのを見て、間に合わないと覚悟を決めたのに。
目が覚めて鮮明に覚えている久しぶりの夢。疲れた。疲れてるん
だと感じた夢です。
何かのメッセージとしか思えない。
見せられた。だからそれを知りたい。生きてゆくヒントを。
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【夢の概要】 今回は、エリカが概略を作成しました。次回は、どなたか? いませんか?
自分の家の南の空一面。大津波。
まわりに人はいなそう。でも、母がいるかも?
すでに遅い。助からない。覚悟した。
逃げようとしていない。音が消える。
飲み込まれるときの記憶がない。
水浸し。一人で状況を確かめている。
母のことを気にしていたが、確認せずに目が覚めた。
大丈夫だろうと思っているのだろう。
なぜ助かったのだろう。覚悟を決めていたのに。
このケース
研究では、類似する夢に焦点をあてます。
フロイトや
ユングの精神分析的なアプローチは、もはや「科学ではない」とまで、否定される時期がありました。
いまでも、その雰囲気が強く残ってはいますが、最新の脳研究によって、見直されています。
夢への接近
のありようは、脳の夢理論とは、まったく違うのですが、
導き出した結論の一部は、かならずしも「間違っているわけではない」ということ。
フロイトの「願望充足説」も、それなりに、「意義のある成果」ではないかということです。
ユングはフロイトの「夢判断」に感銘をうけ、独自の夢への対応を模索し、次のようなアプローチ生み出しました。
夢は、意識と無意識の相互作用によって形成されるため、
まずは夢を見た人の意識の状態を知る事が大切だと考え、
その日の出来事や、考えた事や感じた事を問診し、夢の内容から連想される事を多方面
から回答を求めました。
1回の夢だけではなく、何回かにわたって記録し、テーマの進行を探るという手
法も編み出しました。
※ユングは夢見者と分析者との共同作業を重要視しています。「うらら」はこのあたりを手本としていますね。
意識と無意
識の相互作用という部分は「弱いつながりの記憶」の再構成に
置き換えて
「意識の状態」については「認識の枠組み」と言い換えるとふむふむの夢理論となりま
す。
うららが実践しているような「夢見者との関係性」については引き継ぐべきであるとエ
リカも思います。
今
回のケース研究4では、いわゆる「典型夢」に
ついて、
ユング的アプローチによって得られた「成果」を活用する際の、メリットとデメリットについて解説してます。
多くの人が見ている夢について、夢見者と分析者が共同作業でたどり着いた「夢の意味」が
精神分析という研究分野における「成果」として残されています。現在も精神分析的アプローチがなされています。
※
精神分析で使用される用語は、たとえば「無意識」というようなもの、多くの夢見者に
「受け入れやすい言葉」でもあり、それほど誤解が生じることもないので、
「便利な用語」として、エリカは多用していますが、フロイト・ユング派ではありません。ふむふむ派です。
今回の夢タ
イトルは「覚悟」ですが、夢内容は「津波」に関するものです。典
型夢の一例です。
誰もが見て
いる夢であり、共通の意味合いをもつ夢という意味で「典型」です。
多くのユング派の精神分析家が夢見者に臨床的に対応し、積み重ねた結果ですので
夢見者も臨床家も互いに「納得」して、記録として残された信頼性の高い「夢診断」だと言えるでしょう。
ですから、利用できる部分は、利用し、「成果を享
受」することに異存はありません。
エリカ的には依存はありそうだけど。
さて、早
速、典型夢の成果を利用させていただくこととします。
@津波や洪水のイメージ
ふだん、あまり意識しないことによって、コントロールし、精神を安定させていたものが
何らかの原因やきっかけで調整ができなくなり、精神的な混乱を招いてしまうことが誰にでもありますね。
感情が高ぶり、結果として・・・悩みや迷いの真っ只中にあるということなのかもしれません。
たとえば、自立すべき時期にあって、それに向けて努力したいと感じているときに
母親への依存に飲み込まれ、台無しになる視覚的イメージとして、津波や洪水が使われることもあります。
ケース4の夢でも、「母親の存在」が意識されていますね。ほら、ひとつめの「ビンゴ」
A津波の様子からわか
ること
津波は、これまでの環境が一変することを暗示させます。
破局や再編など、これまでの環境から予想もできない急変を示しているのかもしれないということ。
津波を高台で見ていたり、津波から大きな被害を受けていないのは状況が好転しているということかも?
迫り来る大きな津波を目前にしているのは、現状が劇的に変化していることを示しているのでしょう。
ケース4の夢では、飲み込まれる時の
記憶はないが、水浸し。天井や壁が外れている。
夢見者の被害は、ある程度はあった。でも、完
全に破壊されたわけではない。
破局や再編にあたり、障害となるのは「依存対象である母親」の存在。
母親の所在が気になるが、確認しないで
夢から覚めたのは、そういうわけ。ふたつめの「ビンゴ」
B津波による影響
津波をかぶってしまうのは、あなたの環境や現状があわただしく変化しているという現実があるから。
不安や恐怖の象徴。回りの状況の変化に自分を見失い、危険な状況にあるということ。
ケース4の夢では、津波はかぶっていますね。水浸しですから。
覚悟はできているのに、未練はないのに、間に合わないと感じていることって、何?
天井や壁の壊れ具合を確かめている。天井や壁は夢見者を護る「生活環境」をイメージ
させますから
平たく言えば、経済力とか生活自立のためのスキルと
かが・・・危険な状況にあるということ?
夢見者は「恐怖」を味わい、吞み込まれる瞬間の記憶がない。自分を見失っている。3つめの「ビンゴ」
C津波が発生した原因
感情におぼれて自分を見失っている状態にあるのではありませんか?
自分の感情のままに行動していて、周囲のアドバイスを聞けない状態にあるようですね。
ケース4の夢で、夢見者がしていることは「状況を確認しているだけ」
感じていることは「周りに人が誰もいない」、「声もださない」で、ひとり
で、そこにいるということ。
誰もいない、一人でいる、声に出せないとは
「相談できない、周囲のアドバイスを聞けない」ということ。4つめの「ビンゴ」
D津波がもたらす結果
津波によって、一瞬のうちに全てをなくしてしまうもの。いままでの環境が一変し、思いもよらない事態に陥る。
よい状態なら悪い変化があり、反対に追い詰められていたり、困った状況にあったのなら、全ては無に帰するということ。
いずれにしても、生活が激変し、それに伴い精神的な変化をあなたにもたらすでしょう。
ケース4の夢では、夢見後に非常に疲れたと実感を述べ、生きていくヒントが
欲しいと語ります。
夢が発したメッセージを夢見者が受け取っている。精神的な変化がもたらされている。これで5つめの「ビンゴ」
以上から、水浸しで、天井や壁が外れた程度ですから、精神的なダメージは小さいと言えます。
そして、「母親の存在」を確認していないということを「自覚」しましたから、状況は
改善されるはずです。
さ
て、5つのビンゴにより、この夢の分析が完了してしまいました。
あれ、「意外に簡単じゃない」と、いま、声が洩れましたか? メリットありそうですね。
典型夢はそういう意味で、誰もが見ている「ありふれた夢」として処理されがちなのです。
はい、でました。ほら、これがデメリットですよ。
また、この夢かと見過ごしてしまう。そういうものだと思い込んでしまう。これこそ、デメリット。
分析せずに、分析してしまうことの「罠」に陥っているのは、エリカだけではありませ
ん。
「夢事典」や「夢辞典」で夢占いをしている方も、エリカと同類なわけで、そこは反省すべきかと思います。
以上で、エリカの講話はおわります。
by エリカ
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典型夢については、うららは重要な夢であると思っています。
もちろん、多くの方が見ている夢ですが、その夢見者にとっては、1
回限りの夢であるかもしれません。
誰もがみているからこそ、その夢見者にとっても、
特別な意味合いが含まれる「普遍的」な夢な
のだと言いたいわけです。
普遍的だから、どれも同じなのではなく、普遍的だからこそ、その夢に、十分に寄り添って、
その人なりの事情を汲みながら、診断をしていくこと
が大切だということです。
夢見者は、そのような真摯さを夢分析者に期待しているの
だと、診断経験が示しています。
さて、その視点に立って、ケース4の事例に踏み込んでいきましょう。
夢内容は「津波」ですが、夢のタイトルに「覚悟」という決意を示されています。
覚悟は、次のような表現で示されます。
「恐怖」は感じたけど、すでに遅い。声も出さな
い、逃げようともしない。
そのような「覚悟」を夢見者にさせたのは、南の空一面に、
山の高さほどの津波を見たからでした。
南は、太陽が高く登る方角です。暖かさや明るさが感じられます。
太陽は、真南において、最高点に達し、それ以降はだんだんと下がり始めます。
夢見者の年齢は32才。女性としては妊娠・出産のピーク。これは夢見者が感じているところ。
問診においては、「結婚されているのか、そうでないのか?」、「お子さんがいるのか?」というような
いまどき、口には出せない質問を、あえて「うらら」は問診メールでお尋ねすることになろうかと思います。
個別の事情に立ち入らなければ、誰もが見る夢は、自分にか
かわりのない夢となってしまいます。
「母親」の所在は感じられましたが、具体的な行動・状況が示されていません。
隠れていたとか、高台に逃げていた、2階に居たとか、津波に巻き込まれたとか・・・そのようなこと。
その一方で、夢見者の行動は、次々と表現されている。
津波が来るまでの間は、津波を見る、恐怖を感じ、覚悟し
た。声も出さない、逃げようともしない。
津波が去ったあとは、状況を確認し、気にはしていたけど、母
親の確認はしなかった。
登場しながら、いっさいの行動が示されていない「母親」なのですから、「隠れた感情」が背後にありそうです。
それは「確認しなかった」という夢見者の思いの裏返しのはず。
「確認してほしかった」のかもしれません。夢見者の思いを・・・。
どんな「思い」であるかは、わかりませんが、問診で明らかになる部分でしょう。
それと、もう1点、母親1人居ると夢内容
に記した「夢見者」。なぜ、あえて1人なのか?
母親の他に、「家族としてここにはいないけど、他の家族はいる」ということかもしれない。
おそらくそうなのだろう。津波が来るというときになって、家にいるのは「母親と夢見者」ということのよう。
他の家族は、この出来事に無関係なのだろう。あるいは「母と子」の2人だけの家族なのかもしれないが、
いずれにしても、この非常時にいるのは「母と娘」であり、他は不在ということにな
る。
言い換えると、津波が押し寄せてくるのは「母と娘」の関係性に事態が発生しており、
それは避けられることでなく、やがて押し寄せてくるも
のであることはわかっていたことで、
実際にそのような事態になったら、天井や壁が外れる程度の破壊はあるだろうが・・・
目をつぶっていた夢見者は
助かっており、何かしらの余裕もあることを夢は語っている。
なぜなら、「母親の存在はうすうすと感じていたが、気にはしていたが、確認しなかった」からである。
母親以外のことは確認したのに、母親は確認しなかったと「対比」による繰り返しの強調があります。
ここにおいて、「弱いつながりの記憶」の再構成が
実行されたといえます。
「母親」はたぶん、この津
波で死んでいるはず。死なせたのは、もちろん「夢見者」
そのように明示的に夢に「死体」を持ち込んでいないの
は、
夢見者がかかえているだろう「経済的な自立」や、「女性」としてのひとり立ちが
密かに進行しているの
ではないかと思われます。
つまり、展望している状態ということ。それが夢の結論。
「津波の夢」は典型だから、誰もがみる夢だからと、細部のニュアンスを見逃してた
ら、
夢見者が、いまどの段階にあって、どのように将来を展望しているのかという「認識の枠組」を
現実世界での生活にうまく活かすことができません。
夢は生き物であって、夢見者の反応をみて、あらたに別のステージ・シナリオで創り出されるものです。 同じ夢見者がみる夢であったも、似ていても、まったく同じ夢というものは存在しないと「うらら」は考えています。
典型夢は、夢見者に接近しやすい「わかりやすい」夢ではありますが、
その分、他の夢以上に問診を重要視し、細部にこだわり、ていねいに取り扱いたいものです。
以上で、夢分析における「典型夢」のとりあつかいについて、うららの講義は終了とします。
by うらら
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誰もがみている夢。典型夢。実は、そこに大きな誤解がある。
実際は、誰もがみているわけではないのであって、多くの人が見ているだけだ。
スタートから間違えている。夢見者は自宅の1階から、津波を見ている。
わざわざ、1階からと、自分の居場所を指定しているということは。2階があるということだ。
2階の事情に触れてないのはどうしてか?
夢見者は、母親の存在を感じ取りながらも、結果的に、否定した。
どこに居たのか。2階である。1階は水浸しだったけど、2階にはどうなってしまったのか?
家を呑み込むような大きな津波であったのなら、2階も難を免れないだろうに・・・。
そのことに言及していない。何故なのか?
夢見者は天井と壁の破損を気にしている。天井の上は、2階である。
外れた、歪んだと夢見者は感じている。それは、「母親」の状況を示しているといえるだろう。
天井と壁は夢見者を護るものであったが、それが「外れた、歪んだ」ことを確認している。
それは母親の不在や母性の歪み?
1階の天井、つまり2階の床は外れた、歪んだ。母親は足場を失ったということであろう。
母性の喪失?
声を出さず、逃げようともしない。なぜなら、覚悟したから。何を? 母の不在・母性の歪みと母性の喪失のこと?
覚悟から生じた行動は、記憶をなくし、目をとじるということのよう。
見えるものを見ないという「制限」を設けたのだ。子として、娘としての防御反応かも?
目をつぶったような状態から、目をあけたときに、母親の不在の再確認をしている。
目をとじることと「母親の不在」は、同一だということ。「弱いつながり」の記憶の再生の部分かも?
目をつぶったとき、母親はいなかった。そばにいてほしかったけど。
目を覚ました時、母親はやはりいなかったのだ。いるはずだったけど。
「制限」と「母親の不在」
水浸しという状況なのに、誰も人がいないと
再度、周りに人がいないことを確認している。
水浸しになれば、誰かが周りにいてくれるという淡い期待が見え隠れする。
大津波の背後にあるのは、「愛されたい」という思いだろう。
母の不在が、娘に制限を生み出し、結果として「大津波」をつくり出しているということだ。
どんな「制限」なのか、問診すれば明らかになるであろう。
この夢は大津波の原因が「母の不在」にあることを告げている。
なんらかの制限が、夢見者の「子としての自立」を妨げている、
「娘、つまり女性としてのひとり立ち」を破壊していることに気づいた夢である。
そこには、はかりしれないほどの「怒り」がうごめいている。それが「大津波」の正体だろう。
大津波は「母親の足場」を壊してしまうだろうと夢見者は展望している。
結果として、娘は生き残り、母親は死ぬ。自己再生の夢ということになるだろう。
夢見者は夢のあと、「疲れた、疲れているんだ」と感想をもらしています。
現実世界での夢見者について・・・何か見逃している部分がありそうですから、その部分に光をあててください。
上記の視点から、エリカは夢分析をし、うららは問診によって夢診断すべきだとアドバイスしておきたい。
ふむふむの「講話」はここまでとします。
by ふむふむ
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ケース研究その5は、
26歳 女性 夢のタイトル : なぜあの人
が? 「K子」さんの夢 をとりあげます。
夢分析の基礎的概念をそろそろ共有すべき時期にきました。HPで予習をしてください!
2024/10/19
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