Guarneri 5
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図面からの制作・X

グァルネリ型

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完成に向かって・・


ボディ(共鳴箱)も、いよいよ大詰め、表板の貼り付けを残すだけになりました。
ネックほか、全体の気になるところの修整や仕上げをしておきます。
ネックの取り付けや、サドルなどの小物もつけます。
完成に向かって、さらに神経を集中させて作業をしなければなりません。
 

表板の貼り付け

ボディ(共鳴箱)の完成

最終仕上げ(ニス塗り


セットアップス(フィッティング)

◇ 表板の貼り付け

表板を貼る前に、表板には所定の位置、所定の長さ・巾の、バスバーを貼っておきます。

バックには、ライニングを貼ったボディ。

スクロールの細部までをチェックして、ペーパー仕上げしたネック。

あらかじめ、合わせて削っておいた指板やサドル、ナットなど。

バスバーが貼れたら、もうひとつ、やっておいた方が、あとあとのために都合がいいことがあります。


最初はカッターナイフでかるく筋をつけます。
二度目はしっかりと切り込み、
リブ板だけをカットしておきます。


ネックの取り付けホゾ穴彫りは、表板を貼ってからするより、貼る前の方が表板のエッジが出っ張っていない分やりやすい。
しっかり合わせて当てて墨出し(線書き)が簡単にできるし、側板部分だけでも刻んでおくと、本当に後が楽です。

写真にあるように、筆者は、ネック側にも中心線から垂線を引き、この段階で上辺33mm、下辺(ボタン側)22mmの、 二等辺三角形の頂点部分をカットした、正しい台形に成形しておきます。
これを側板のセンターに合わせて、尖った鉛筆で線を書きます。(写真は、はっきり写るように太くしてありますが、実際はシャープな線ですヨ。)

その線の内側に切り込みがくるように、20センチのステン定規を、外側にあてがって切っています。
まかり間違ってカッターが滑っても、内側なら影響がでないからです。

さて、今回のこの楽器がある程度のグレードに仕上がったら、 私のヴァイオリンの先生に貰っていただこうと、当初から考えてつくっていました。
日頃からの、とても熱心なご指導の、お礼のつもりです。

お師匠さん(わたし達の仲間は、冗談半分に、先生をそう呼んでいます)のもっている楽器は、いずれもストラド型のオールド、 それで、私のつくったガルネリ型も、どうしても一台持っていただきたいわけです。
ガルネリの、例のイエズス会の十字架のあるラベルを濃紺でプリントし、「〜女史に献呈するもの」と書き入れました。



余談ですが、右手前のメガネは

工房専用の老眼鏡です。

ラベルをつければ、後は貼るだけ。

その日の早朝は気温が低かったので、その年はじめてのストーブを点火。
その上に、側板部分と表板をかざして、やや熱くなる程度まであぶります。
ニカワ接着の前準備、
焼き入れです。
暖めることで、木地にある程度のニカワ分が吸収されやすくなったり、冷えてゲル化するタイミングを遅らせる・・という二重の効果があります。

そうしておいて、貼る方、貼られる方、両面にニカワを塗り、手際よく締めつけていきます。

◇ ボディ(共鳴箱)の完成

ネック取付用のホゾ穴は、指板がボディの中心線にそって、 垂直に、まっすぐになっているかどうか。
取り付け角度は、指板が指定した角度に正しく貼れるかどうか、丁寧に、確認しながら少しずつ彫ります。

指板には、両面粘着テープなどで仮止めできるようにしてチェックします。

ネックの取り付け角度は、指板の先端が表板の上 21.5mm、 ネックの指板面は、表板より6mm出るようにします。

この角度は、非常に大切です。

指板が低くなれば、駒も低くしなければなりません。
駒が低いということは、弦の張力が強くかからなくなってしまい、結果として、鳴らない楽器になってしまいます。

反対に高すぎると、駒も高くしなければなりません。
駒が高すぎるということは、駒自体の重量も増えますから、最初から余分な重さのミュート(弱音器)をつけたように、 こもりがちな音で、声量のない楽器になってしまいます。

それに、演奏上の弾きやすい、弾きにくいという、操作性をも左右するものです。

ちょっと、分かりにくいかも知れませんが、 スクロールのてっぺん中央に針を刺してあり、糸をぶら下げて垂線をチェックしています。

糸には、重りにビスをぶら下げてあり、その糸と、ネックの中心線、それに表板の中央の剥ぎ合わせ線がぴったり、 一直線になるようにホゾ穴を彫らなければなりません。

うっかり、ノミで削りすぎないように、最後は、ティシュペーハー1枚分ほどの厚さの調整をします。

しかも、よく見て、取り付ける正面、側面、ボタン側の底面、すべての面で両者が接するようにすべきところです。

とくに、ホゾ穴の側面は、ネックを差し込んで、最後の1〜2mmで、木がキュッと音を立ててきしんで入るくらい、ぴったりにあけます。
ですから、ただ差し込んだだけで、持ち上げても抜けるようなことはありまぜん。

何しろ、この場所は、弦の張力のすべての加重がかかる場所になるからで、それくらいに接していると、 接着力も高まり、ネックがコクンと外れるようなことにはならなくなります。
そして、ネックをニカワ付けします。
ネックが貼れたら、ネックの付け根と、ボタンの成形です。

裏板、外周線の2mm上を中心にして、直径21.5mmの半円が描けるようにします。

サドルもぴったりになるように切り込み、貼り付けます。
ついでにエンドピンの穴もあけておきます。これは、ごく細めの仮穴で、後から、エンドピンに合わせて空け直します。

ペグ穴もそうですが、最初から、必要な直径であけるのは危険です。
センターがずれたら、一発でオシャカですからね。
また、裏側にバリがでて、汚く空くこともあります。

最初は細めにして徐々にあけた方が楽だし、失敗がありません、念のため・・・。

それから、イタリア系の作品によく見られるエフ字孔・袖部分のくぼみ(赤丸のところ:正式な呼称が分からないので、 私は仲間たちと『エフ字孔のエクボ』と呼んでいます)も、ちょこんと、彫ってやります。

これが、音響的にもプラスになるものとは思われませんが、振り返った「エクボ美人」がほほえんでいるようだし、 楽器の表情が豊かになりますから、私は好んで彫っています。

これで、すっかりボディの完成になります。
(11/25)


◇ 最終仕上げ(ニス塗り

削りや組み立てが終わると、いよいよ最終仕上げ段階に入ります。

最初に、汚れ防止のために薄く着色してありましたが、 それより少し濃いめのアルコール系の着色剤で、2度ほど着色。
その上から、シーリングするためにプライマーを1回塗ったところです。

まだ薄いので、ところどころに塗りムラも見えますが、この程度なら、徐々に塗り重ねていきますから問題はありません。

軽く、1500番のペーパーで表面をならし、オイル・ニスを塗ります。

今回使ったオイルニスは、欧州から個人輸入したもので、はじめて使うものです。

後ろの缶入りになっているもので、3つある大きい缶が500cc入り、その前に置いてある小さい方が240cc入りのものです。

少し渋めの色合いにしたくて、赤茶と茶をおよそ半々に混ぜ、
ジャムビンに小分けして使いました。


エンドピンの穴に棒(割り箸など)を差し込み、
箱の左右中央には、安定して置けるようにくぼみをつけてあります。

オイル系は乾くのが遅く、ほんの少し厚くなっても「垂れ」ができます。
その点で、水平にしておく方が、その心配がありません。

だからといって、決して厚塗りしているわけではありません。

どちらというと、私は薄目のものを回数多く塗る主義。


この「引き出しの箱」は、実に使い勝手がいい!


生乾きになったところで、上から吊り下げて乾燥


吊り下げは、園芸用の支柱(針金にグリンの塩ビ皮膜がまいてあるもの)を「J」の字に曲げたものにネックを引っかけるのです。

スクロールの、中心の出っ張りに支柱が都合よく当たり、
決して落ちるようなことはありません。


また、人によっては「ム」の字に曲げた針金に、ペグボックスとスクロールの
付け根に引っかけて吊っている人もいます。


完全に乾いたら、1500番のペーパーで「水研ぎ」します。

ペーパーを水に浸し、濡れたままで表面をこすります。
研いだ分、白っぽいぬめりが出ますから、 それは雑巾で拭き取ります。


オリーブ油とかサラダオイルで「油研ぎ」する方もいます。

その場合、表面に残った油は、アルコールを浸した雑巾でサッと拭きます。

筆者は、それが面倒ですから、水研ぎ専門です。

ただし、木地まで削ってはいけません。

そのために、当初、プライマーを塗っているのです。(12/1)
逆光で見て、遜色なく見えるまで何回も塗っては研ぎ、塗っては研ぎを繰り返し、最後は2000番のペーパーで軽く研ぐ。

そのあとから、筆者は極超微粒子のコンパウンド(乳液状)で
磨いて仕上げています。

最後に、そのコンパウンドを拭き取るように、
オリーブオイルを1、2滴含ませた布で拭きます。

このオイルの皮膜は、ニスの保護にもなりますし、つやもでます。 12/8


◇ セットアップス(フィッティング)

ナットは、市販品だとあらかじめの大きさ・形につくってあり、
それを合わせて削るだけです。

筆者は、原木から切っていますから、8割方、鋸目を入れておき、
あとの残りをノミか彫刻刀で削り、サンドペーパーでならします。

その後、スクレーパーでつやのあるなめらかな表面に仕上げ、
それから切り落とします。


サドルも含め、小さな部品は、このようにするとたいへん作業がしやすく、また早くできます。

指板など、パーツの制作に関しての詳細は
こちら

指板やナットができたら、貼りつけです。

実は、手前の木製クランプは、指板貼り付け専用につくったもので、
テレビのアンテナを固定するための、 コの字型をしたボルトと蝶ナットがあったので、
それでつくったものです。

下の部材はネックのアールに合わせて彫り、上のものは指板の62φに合わせ、
それぞれにパンチ・カーペットの端切れを貼って、クッションにしています。


上の部材は、写真のようにボルト穴を切ってありますから、蝶ナットをゆるめた程度で、
パカンとはめ込みが可能で、便利がよくて具合がいいですよ。(^o^)  

ネックに指板がついたら、ネックと一体化させます。

ネックと指板に段差がないように、しかも、いちばん手でふれる場所ですから、 なめらかな肌触りになっていなければなりません。

ペーパーとスクレーパーで平らにします。



その後で、ネックそのものが握りやすく、操作しやすい状態になるようにします。

多少、すり減って目が細かくなっている300番程度の布ペーパー、巾2センチほどのもので、 靴磨きよろしく、シュッシュッと磨きます。

この方法は、意外に効果があり、きれいに、滑らかになります。 12/12

ペグ穴をリーマーで、中心線から見て直角にあけ、
ペグを差し込みます。

反対側に出っ張った分は、2mmほど長く切り、先端を半丸にします。その部分には、倍ほどに薄めたニスを塗って仕上げます。

エンドピンの穴も、リーマーで最後の2mmを残すぐらいにととのえ、柔らかい木を添えて、
小さな木槌でコンとたたいて入れるぐらいにしておさめます。


スポアーも付け、ブリッジを削り、魂柱をたてるとほぼ完成です。
今回のフィッティング部品には、
欧州製(
S.V.S.トーンウッド社)のローズウッドを使いました。

とくに、テールピースには、金色のユリのような(立教マーク)象嵌がしてあり、ちょっと華やかな感じです。

ニスも、同社のもので、今回、はじめて使ったものですが、色・艶とも大満足です。

スプルースでさえ、木目がご覧のようにキラキラと輝いて見えます。

裏板の、ささやかなフレームも、さらに輝きを増しました。

さあ、これですっかり完成です。

「音はどうか?」って、それはもう、習作用の材料で、かつ、できたばかりのものにしては、大いに満足のいくものでした。

とくに、開放弦への共鳴が顕著で、のびのある音になりました。

今日はレッスン日でしてから、これを携えていき、本器の嫁ぎ先である、
お師匠さんご本人に試奏していただきまた。

現在、お使いのイタリヤ製オールドから比べ、ほんのわずかブリッジが高かったので、持ち替えたときに違和感のないように、 さらに、魂柱なども含め、
あと一週間かけて微調整したいと思っています。
 
永らくのお付き合い、ありがとうございましたm(_ _)m。12/16

以上の、全体の流れをスライドショーにしてあります。  こちらも→ ぜひ、ご覧下さい。

なお、疑問・質問がありましたら  こちら へどうぞ・・・。

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