Remaking A Austrian Violin 2
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オーストリア製のリメイク U

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今回の、この表板、じつは住宅の神棚に使う材料の切り落としで、知り合いの大工さんからいただいたもの。
素材は、北米産のホワイトスプルース・一枚物のため、結果として右側に板目部分が少し出てしまいました。
こんなものでも、楽器としての発音にはそれほど大差はないものと確信しています。
少なくとも、もとの、ペカペカの薄過ぎるいものより、ずっと高音域の伸びはよくなるはずです。

 ◇ 表板のつくりなおし 
もともとがその程度のものでしたから、そんな、安い材料(ただですからね)を使い、遊び心を入れてつくりました。

実は、このバスバー、後から貼り付けたものではなく、古いイタリア製の修復 で見た、本体と一体式になっているという実験的な要素をふまえ、彫り出して仕上げたものでした。
丁度、この工程をやっていた頃、制作仲間のあるメーラーさんから、電動工具を使ったパフリング彫りの質問がありましたが、これはすべて手彫り。

ルーターを改造したパフリング専用の工具もつくってもっていますが、ここ何年かは手彫り専門、 一枚彫るのに何時間もかかりませんから、じっくり楽しみながら丁寧に彫っています。

そのパフリングも、すっかり入れ終わりました。

元のはずしたもの(左)から比べると、筆者が新しくつくった表板の方が、エッジの取り方など、ずっとすっきりとしていてシャープに見えるでしょ。
エッジ処理でも、とくにチャンネル彫り(反り返りの、エッジを少しはっきりとさせている)部分の違いをよく見比べて下さい。
 ◇ ネックのつくりなおし 
ネックの彫刻は、その構造上、どうしても片側ずつしか彫れません。 ですから、表裏両面、前後左右、年中見比べながら均等な
大きさ、形になるよう、少しずつ、確かめながらの作業です。
全体の形がと整ったところで、ペグ穴とボックスを彫ります。

ペグ穴は、ドリルスタンドを使って穴を空けますが、それも一気に目的の穴を空けるのではなく、例えば、5mmのドリルビット程度からはじめ、 順次、6mm、7mmというように、徐々に大きくしていきます。

その方が、余計なバリもでにくくなるし、失敗もなくなります。
ペグボックスにしても、線を引いた内側に反って、ドリルで穴をたくさん空けておきます。ノミや彫刻刀の彫りを楽にするためです。

すでにペグ穴を空けてありますから、目的の深さも認識しやすくなるし、無数のドリル穴があると、削りくずも出やすくなります。
筆者は、荒彫りのつもりで6mmの角ノミ・ビットを使い、さらに特別の当て木を台にし、角度をつけて固定して彫っています。
ただ、穴が突き抜けることのないようストッパーの調整には、十分、気を使って調整しています。
まだまだ修正する余地はありますが、ほぼ完成したネック。
スクロールは、ふっくらとしたきれいな丸がボクの好み。
較べていただくとよく分かると思いますが、元のものは外周の円が上(この写真では下)にきて、急に狭くなっていることが、 貧弱な、ふくよかさがないいちばんの原因でしょう。
 ◇ ネック・スクロールの彫り方 


ちょうど、これが彫りあがった頃でしたが、制作仲間であるメーラーのT氏から 『すみやさんは、スクロールをどういう工具で彫っていますか?』という質問がありました。

ついでですから、筆者愛用の工具類で、その彫り方を説明します。

ある程度のところまではノコで丁寧に、細めに挽いて形づくりをします。
その後は、半丸ノミや彫刻刀の出番です。

それ以外のものとして、左から、半丸の鉄工ヤスリ(中)、同(大)、平彫刻刀や半丸彫刻刀など4本、細い繰り小刀、廻しノコなどなど・・。

道具類は、すべからく使い手の好みであり、「これを使わなくてはならない」、というものではないはず。

使い勝手がよく、効率よく作業が進められ、かつ、きれいに仕上がることが大前提となりますから、ここで説明するのは、その一例に過ぎません。
とりわけ、断面が楕円の柄が付いている彫刻刀には、3M社の粘着式ペーパーを貼り、二筋の溝の仕上げなどに使ったりします。

太さが、溝と合うことが必要ですから、絵筆の柄も使うことがあります。

要は、身近にある使えるものは何でも使うのです。
丸の棒ヤスリ(鉄工用)も、巾がいちばん狭くなってくるトップ部にはベターです。 固いカエデ材で、しかも小口に当たる、いちばん固いところだし、刃物では削りにくいところ。

この丸棒ヤスリは、先にいくにしたがい徐々に細くなっているので、その直径と溝の巾があるところで削り取ります。
ごく細い丸棒ヤスリも、こうした付け根を
きれいに仕上げる際に使います。

二本の溝の、中央の山を削り取らないよう、
このようにかなり寝かせて削ります。


この部分だけは、廻しノコでほどよい深さまで挽いて切ります。

極細の丸棒ヤスリ同様、きれいに彫り進めるために、
このように寝かせて切ることも必要です。

この狭い場所の溝掘りには、繰り小型をこのようにしてあてがい、彫るのが効率的です。
ご覧のように、左手の親指を刃物の背に当てて、繰り出して、送るように削っていくと楽だし、切りすぎることもありません。


なおかつ、よく切れるように研いであると、ご覧のようにペーパーの必要がないぐらい、きれいに彫ることができます。

半丸の彫刻刀でも、この手打ちのものは、手持ちの中でもアールの半径比較的大きめで、スクロールにはよく使っています。

繰り小刀と同様、平の彫刻刀だって、こうしたアールの場所のならしに使ったりしています。

ご注意! 左手でネックと彫刻刀をささえ、右手にデジカメですから、
実際に彫っているようなホールドにはなっていません。

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