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オーストリア製のリメイク T May '08 |
昨年末、裏板や部品代程度の価格で、「フランス製」だというジャンク・ヴァイオリンをネットオークションで入手。
フランス製のものはVuillaumeのラベルが貼られた『バラバラになったチェロ』の経験しかなく、
フランス人のつくりの詳細を、実際に自分の手にとって見たかったこともあったのです。それが以下の写真。
ご覧のように、裏板と側板の素材だけはまぁまぁのものでしたが、 あとのつくりが全然ダメ。 そのことは、当初より商品説明の中にも書かれていて 承知していたことでしたが、それでもひどいつくり。 ただ、リメイクすればレッスン生向き程度のものになりそうだという 予感ははじめからありました。 |
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リブの削りや組立、ニスの塗り方もそこかしこにムラが見られました。 | とりわけコーナー部においては、上下(裏表)のズレや 垂直性の悪いところもあちこち・・・。 |
表板は薄く削りすぎていたせいか、割れがあったり、 ニスは分厚く塗られ、そのためひび割れもでていたり・・・、 |
サドルの左右にもクラックが入っていた。 |
そこで、ニスをほとんど全部剥がし、表板を取り、バラした。 | 裏板の、周辺部の反り返り(チャンネル彫り)が浅く、
周辺部のみ少し削りとったりしたところ。 表板も裏板も、平均して薄すぎていて、 それで割れも出たのかもしれない。 |
指板を外してようやく分かったことですが、 表板の、ネックの付け根にも2本のクラックが・・。 |
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表板を新規につくるに際して、まず寸法が比較的安定している裏板からトレペで型紙をとった。 その型紙がはっきり分かるように、裏板の上に半分に折りたたんで乗せてある。 その型紙を、片面が白い3mmベニヤに転写、ミシンノコで丁寧に切り抜きテンプレート(右端の白いベニヤ製)とし これを基準にして、表板をつくりなおす。 その荒切りして表側だけアーチングを削ったのが左のもの。 |
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本器のラベルには、「CHRISTIAN NINAUS MARIA SAAL ANNO 1978」と書かれていたが、
後日、じっくりネットで検証した結果、これはフランスではなく、オーストリア製であることが分かった。 CHRISTIAN NINAUS が製作者名、MARIA SAALが地名であり、そのマリア・ザールというところは、オーストリアのグラン河添いにある ゾルフェルド谷、クラーゲンフルト・ランド地域のカリンティアというところにある小さな商業都市らしい。 なんでもマリア・ザール大寺院があるところで、それはとても由緒ある寺院とか? まぁ、ヨーロッパ製には変わりはないわけで、ボクにとっては産地国はそれほど問題ではない。 むしろ、はじめの国のヴァイオリンというだけでも有り難い。 ラベル左側のマークは、普通なら工房のマークなどが多いが、これは、その街のマークであることも分かった。 |
裏板の鉛筆書きは、小生が書いたチェックした板厚の数値。 |
ネックのスクロールもふくよかさがなく貧弱、 しかもペグ穴の間隔も少しバラバラな感じ。 |
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ネックもつくり替える決断をしたのは、 あちこちに継ぎ接ぎだらけでこれもダメ、つくり直し。 |
原因は、明らかに、ネックの長さ、高さの初歩的なカットミス。 |
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