Remaking_A_Czekoslovakia 1 |
チェコスロバキア・1924年製のリメイク T Nov '08 |
10月の下旬のこと、久しぶりにオークションをのぞいてみたら、ちょっと気を引く古いものが出ていた。
早速、入札して落札、そこで手に入れたのがこれ。
◇ 現状 | |
出品のケースからも古さを感じられるものであり、古い弓も付いている。 ときおり、こうした古いものの中から、いい弓だったこともあるから、こうしたものの落札には、弓も小生の大きな楽しみのひとつになっている。 南米では、昨今、なんでも弓のスティックの原木になるフェルナンプーコから赤い染料を取るための伐採が進み、なかなかいい原木がなくなっているという。 そうした意味からも、ヴァイオリンのみならず、こうした弓もリフォームして活かしたいと思うのだ。 |
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裏板はご覧のように一枚物で、前回のオーストリア製から比べても、つくりもなかなかしっかりしているように見受けられる。 この写真ではなかなか分かりにくいが、周辺のエッジ処理も決して悪くはない。 逆に見れば、これくらいのグレードのヴァイオリンを使っていた前任者を想像してみても、悪い弓ということは少ないであろうと思うのだ。 |
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弓毛はついていないが、そのカーブからもかなり腰のありそうなことが伺える。 | |
出品の商品説明には、ご覧のようなラベルの写真もあり、虫食いで一部、読めないところもあるが、AntoniusStradivari in Cremonensis 製作者(もしくは工房名)は判読不明、製作番号もしくは品番?17-13、1924製、Czekoslovakiaと書かれていた。(赤字は欠落部分) つまり、これは、ストラドモデルとしてチェコのあるメーカーがつくったもの、ということだ。 |
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その後、三重のNさんから、『そのマークなら、私のカールヘフナーについているよ』と、ありがたいお知らせをいただきました。 こちらが、カールヘフナーのメインラベル。 |
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こちらが、E線側についているカールヘフナー社のロゴマークと品番のラベル。 Nさんがおっしゃるには、『確か過去には当時のドイツ領(いまはチェコ)にも工場があったとか、、』というのですが、まさに同じマーク、まず間違いないでしょう。 (09.3.3. 追記) |
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商品説明には、弓の部分アップもでていたので、こちらもかなり様子をうかがい知ることができる。 ヴィオラ弓のように、フロッグの後ろがアールになっており、化粧巻きは銀銅線ではなく、これは古いものだけに、きっとほんものの鯨のヒゲが使われているのかも知れない。 この時代のものとしては、そこそこのグレードだったことが推測できる。 以上が入手前の現状として、出品者が撮影した写真をそのまま拝借しました。 |
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◇ リメイク開始 | |
まず、全体の汚れを落とすために、メタノールで丁寧に拭き落とす。 オリジナル・ニスがアルコール系だったので、長時間、しつっこくこするのではなく、丁寧でもさっと手際よくやるのがコツ。 C部コーナーやネックの付け根、リブと表板・裏板などの入り隅は、古い歯ブラシを使い、やはり、きれいにした。 結果として、極薄く、表面のニスを一層ほど剥がすようになる。そのため、とてもきれいになったのだか・・・・。 当初は、ある程度の古さがあるものなので、できるだけそのままフィッティングしただけで使い物にしようと考えていたのだが、触っていて、全体がとても分厚い感じで、コンコンと固い響きなのだ。 |
折角のいい部材のものだけにそのままではしのびなく、結局、裏蓋を開け、納得いくようなグラデュエイションに削ることに・・・。 |
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ラベルのアップがこちら。 昔の人はゴキのことを「ワンカジリ」と呼んでいた通り、ゴキブリは昔の木のお椀でさえかじったというところからそんな呼び名もついている。 きっと、このちぎれたラベルも、ゴキのディナーになった結果かも知れない。 |
裏板のトップには、メーカーの(イニシャルらしい?)刻印スタンプが紫色のインクで押されていた。 予想通り板厚は厚く、中央部では最大5.2mm、周辺部でも分厚いところは4.5mmもあった。(標準的な裏板の厚さは、中央部で3.5mm、周辺部は2.5mmであり、少なくとも、私はこの数値を基準にして、それぞれ、使う板の質を見極め、何パーセントずつ上下させて削っている。) また、全体としてのムラがおおきく、等高線で描いたら、それこそ複雑な低気圧、高気圧があちこちに点在するような図になるだろう。 それを、できるだけなだらかな丘のような、ゆるやかな地図にしたいと思うわけだ。 |
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表板も同様、分厚いし、それに汚いのは甚だしい。 顔がいくらきれいでも、歯が汚かったり、臭かったり、襟足や胸元が見苦しい女性は、いくら見てくれがいい女でもまったく魅力が感じられない。 女性はすっぴんでも、清楚な方がいい。 また、本器は外枠式で組み立てたものか、ブロックがない。 下だけに、お情け程度の、ブロックとは言い難い補助材が接着したあった。 |
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◇ ブロックの有無 以前、あるメーラーさんから同じようなつくりのリペアーについて質問がありましたが、これでも、実際に何十年も保ちこたえていたという実績があるわけで、全体が組み上ってしまえば部材自体が「共支え」して、壊れる心配はないものです。 何らかの、外的な衝撃があった際には、何もないより、この程度のものでも、あった方が丈夫であることは間違いないことですけどね。 地震の際、トイレがいちばん丈夫・・・ということがいわれていますが、同じような理屈で、このコーナー部では、上下のリブが入り組んでいるところですから上からの圧力に対しては、いちばん丈夫な場所でもあるわけです。 |
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さらに、特出すべきはバスバーが一体化した、削り出しによるもの。 これは、以前リペアーした古いイタリア製、オーストリア製につぎ、私にしては三度目のことだ。 ただ、長さは253mmと、標準の270mmから比べたら若干、短いのだが、一体化したものとして、これはそのまま残すことに・・・。 ただし、全体の巾やピークの位置などを考えなく削ったようで、その点だけを「すみや流」に改造する予定。 |
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この写真では分かりにくいかも知れませんが、表板の木目とバーの木目がつながっています。 リブもやや厚めで、大きなベルト・ソーで挽いたノコ目がそのまま残っていたり、ともかく、全体が分厚すぎるし、汚らしいの一語。 |
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