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バラバラなったチェロの修復 U

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修理であっても、これほどリブがバラバラになったものを組み立てるのには、
どうしても内型は必要になります。

ブロックが仮付けできませんから、欲を言えば、外型もあっ
た方がいいでしょう。

とくに、新規につくる場合とは違い、できている部品を貼り合わせるのですから
少しでもずれたりすると、最後にきてつじつまが合わなくなってしまうのです。

    ◇ 内型と外型づくり   

 

製作手順からみても、表板より裏板の方が寸法の安定性があるという考えから、裏板から外形寸法を、くり抜くベニヤに写し取りました。

修復用の内型にはコンパネ2枚を使い、中間に所定の巾のスペーサーを入れ、上げ底式にして必要な厚さにするつもり。

その外周線ピッタリに、自由曲線定規をあてがったり、所定の巾があるワッシャーを使って、内型の外形をつくっていきます。

つまり、裏板の外周から、何ミリか、エッジが出ている出巾、それにリブ材の厚さ分だけずらして、内側の線(内型の実寸)をとります。

そのため、曲線定規の要所要所には、正しい曲線に定規が納まっているかを確かめながら、洋裁のマチ針か画鋲などを刺し、動かないように固定して線を引きました。

内側・外側とも「枠木」として使うつもりでしたから、丁寧にくり抜き、その外側の部分を 外形を保持するための「外型」とします。

写真は、その外型を2寸の角材のスペーサーで持ち上げ、リブをはめ込み、内型の外周線が正しくできているかどうかをチェックしているところ。
無理なく、正確に勘合するまでは、外型、内型ともペーパーやヤスリで少しずつ削り、微調整しました。
各ブロックは、通常の新作のように内型にニカワで仮付けができません。だから、こちら側はビスで仮付けするため、作業用の、大きな四角い穴を空けてあります。
もちろん丸い穴と同様、各部位を締めつけるための、クランプの受けにも利用します。

こちらの裏板側だけは、あえてセンターでジョイント。
ピッタリつくりましたから、側板のアッセンブリーがすんでから内型を外す際、ビスを取りさえすれば内型をバラし、簡単に抜けるようにした配慮です。 また、裏板を貼るためのライニング巾の分16mmだけ持ち上げるため、左右2本の枕木を、やはりビス止めでつけてあります。
二枚のベニヤを、中間のスペーサーで一定の厚さにつないだところ。
まさに、『上げ底式』の内型ができました。

二枚のベニヤを重ねるわけですから、どの部分をチェックしても
上下が底面に対して垂直でなくてはなりません。
丁寧に、四方八方からチェック! 悪い部分は慎重に修正します。

そして、もう一度、各リブをはめ込んでみて、全体の具合を確かめます。

それも、外枠式の組立同様、内型にはニカワ付けはできませんから、外枠と内型との間に差し込むようにしてチェックしました。
とりわけ、ネック側のブロックについては、ネック本体の正しい取り付け角度、センターラインを保持していなくてはなりません。

そのためのチェツクもここでしっかり行っておかなくてはなりません。
正しい角度、位置が確定したところで
木ネジ2本(赤い矢印)でネックブロックを内型に仮固定。


 ◇ その他の補助具製作 

 

バスバーの末端も剥がれていましたから、
これもしっかり貼っておかなくてはなりません。
これには、ヴァイオリン用につくったバスバー・クランプの
締めつけボルト穴を深めにずらし、使いました。

裏板・表板の剥がれた中央接ぎ合わせを、正確に貼るためのギブス。
左右のボルトで締めつけて固定します。
こうすることで、底面の水平度がしっかり保てます。
そのギブスを使う部位の曲線を正確にとるため、 写真のような所定の半径の丸い輪を使い、一定の幅を平行にずらした曲線をとります。
その線と同じカーブを21mmベニヤに転写、切り抜いてつくりました。

ご覧のように、裏板に接する面にはクッション材として、パンチカーペットを切って貼り、養生用のパッキンも兼ねています。

当初、左右所定の位置に、上下からボルトで圧着して固定しておく。

その一方を何ミリかでも可動するようにすると、横からのボルトで中央に向かって締めつければ、中央のハガレに対してある程度の圧力はかかるはずだと考えたのです。

実際、そのようにつくりましたが、しかし、その場所はハガレかかっているトップの部分。 いちばんハガレの巾が大きい末端で圧力をかけないと効果がないことがあとで分かりました。
そのために、追加して別の治具をつくりました。 それは小さなクランプをふたつを写真のように一本の棒でつなぎ、それで締めつける仕掛。

左側のクランプ(黄色)は、上下からただ締めつけるだけの固定用。

右のものは、その部分を固定してから、右端の横にあるボルトを締めつけると、クランプで締めつけられているので、 そのまま中央(内側)に向かって数ミリ分、移動して圧力がかかるようになっています。

コーナー部もリブとブロックがハガレているところもあったし、 そのコーナー部にも圧着専用の「押さえ用の当て木」もつくる必要があります。 コーナーの曲線を、鉛筆で、所定の木材・断面に写し取り、カンナで削るだけのもの。そのリブ接地面にも養生用のフェルト・カーペット(ブルーの部分)を貼ってできあがり。
そして、つくった当て木で、リブのコーナー部もしっかり貼っておきます。

一個所一個所の部分をかためてから、リブ全体を貼るつもりでしたから、 ある程度、部分貼りし、つながったリブにより安定したブロックを、それぞれの内型に中側からビス止めしました。

そのあたりのことが新作と違うところで、ここは「その逆も真なり」。

それぞれの部品にしても、一旦は完成していたものだけに、ある程度、周りが固まってから内型に取り付けする〜というように、 手順を逆にしなければ、細部が微妙に合わなくなってしまいます。


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