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バラバラになったチェロの修復 T
Nov. 2006

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F君の奥さんは地元アンサンブルのお仲間、F君ご自身は、地方オケホルン奏者という、ご夫婦そろっての音楽仲間。

その彼がある日のこと、バラバラになったチェロを私の工房に持ってきて見てくれというのです。

修復するときなど、『どうしたら、こんなにきれいにニカワを剥がしてバラバラにできるのだろう?』というぐらい・・・に、まさに、バラバラの壊れ方。

このページ構成と主な内容 (以下の、6ページに分かれています。)
T ◇ 現状の把握 どのような状態の壊れ方か?
U ◇ 内型や外型づくりから
  ◇ その他の補助具製作
修復のためとはいえ、型も必要。
きれいに、しっかり接合するためにも、裏板・表板などの、
接ぎ合わせ修復のためのギブスも製作
V ◇ リブ・アッセンブリー
  ◇ 裏板接着の当て木
いよいよ側板の組立や、ライニング貼り
ここでも当て木(クランプ)をつくる。
まわりができたら、いよいよ裏板から接着
W ◇ 表板の接着 表板を貼ると、もうすっかりチェロのボディらしく・・
X ◇ 弓の修復 弓も修理したり、毛替えしたり・・
Y ◇ 最終のフィッティング 駒の削りや魂柱

    ◇ 現状の把握   

全部バラバラで・・・

パッチもはがれていたり・・

表板と裏板、ネックブロックがついてままのネック本体、各部分のリブと
リブに貼ってあったライニング、エンドブロックなどなどがバラバラ状態。
裏板のセンターに点々と貼ってあるパッチまで剥がれていたり、剥がれていないものでも、ちょっと動かしただけで楽に剥がれてしまうのです。

でも、フランス製

魂柱のところには「受け」のパッチが

そのパッチが剥がれたところとラベル。黒い斑点は、エフ字孔から垂れた着色料ですが、なぜか、内側の大きな面積に焼いたような跡があります。

ラベルには、Modele d apres / Jean Baptiste Vuillaume a Paris / 3 rue Demours-Ternes とあり、グァルネリの、例のスエズス会の十字架と同じようなマークがついています。

意味は全然分かりませんが、弓で名高いフランスのヴィヨームのモデルというものだと考えています。

本物のヴィヨームだと、製作年順の一連番号が書いてあるそうだし、少なくとも、その製作年だって入れるはずだと思うのです。

もし、本物なら多分おことわりしていたでしょう。なぜなら、名工の作に対して、小生のごとき趣味家が手を入れることはよくないことだと思うからです。

さて、表板の、魂柱のあたる場所にも、大きな丸いパッチが貼ってあったりします。魂柱の受けのためのヘソでしょうか?

このヘソについては、筆者のヘソのあるヴァイオリン の項を参照して下さい。

普通なら表板も、裏板も、エンド・ブロックのところは、ある程度の厚さで削り残しておくところですが、 なぜか全体と同じように、普通に削ってしまってから、あとで補強のように別の木が貼ってあったりします。(右の写真が裏板)

しかも、ニカワの周辺にはカビのようなものが、白く粉をふいているように見えます。

裏板も表板も、そのエンドブロックのところから15センチほど、センターの接ぎ合わせも剥がれています。

分かりやすいように、その割れ目に紙を挟んで撮影しました。

裏板のボタン部分も削り残すところですが、ここにも2ピースの当て木を貼っています。 これは、表板サドル部分のハガレ。

裏板の素材は結構いいもので、フレームもいい出方をしています。 ライニングも、全部剥がれたところから半分程度剥がれているものなど、かなりハガレがありました。

リブのひび割れ

リブの一部にも、ひび割れの修復跡があります。こちらはその表側。 内側には、細長いパッチで補強してありました。

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