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バラバラのチェロ修復 PartU-3 Feb. 2007

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◇ どういう手順ですすめたらベターか
その手順前後で、やりやすいか、きれいに仕上がるかが決まります。
まずは、表板や裏板の接ぎ合わせから・・。

ヴァイオリンと違い、ネック付け根の接着面積が大きくどうしても外れません。

無理をするとリブ材を傷めますから、このしっかりとついているリブのアッパー部とインナー部はそのままで修復することにしました。

写真の撮り方がよくありませんが、この画面ではいちばん左端にあたる、ようするにネックブロックのところです。


今回、とくに中央の接ぎ合わせが大事ですから、前につくったギブスを、一度はめ込んでみて、様子を見ます。
そして、一部、アーチを合わせて削り直し、修正したりして、できるだけピッタリと中央の接ぎ合わせがいくよう、改造して使うことにしました。





剥がれの部分が大きいので、今回、さらに二つ追加・作製しました。

まず、このギブスでしっかりとアーチを確保しておき、そして左右から、旗金で締めつけるようにして貼り付けるよう段取りました。
左の写真・中央のように、あらかじめチェックしておけば、これほど簡単なクサビ程度の補助で、さらに、微妙な調整も可能になります


前に貼った養生用パンチ・カーペットをいったん剥がし、薄い3mmベニヤを上に当てて、さらに頭が蝶になっているボルトを取り付け、中心部だけが、余分に圧がかけられるような構造にしました。左右、接ぎ合わせた結果で、コンマ何ミリもの段差をつけたくないからです。


インナー部の、アーチの型を取っているところ。
ステンレスの、可動するピンが無数に並べられており、上からそっと押すと、その分だけピンが押され、実物そのままの形が写せる。
こんなアーチングゲージも市販されている。
(これは本業で使ったもの)



当然のことながら、表からは見えない裏側も、しっかりアーチに合っている必要があります。そうでなければ、わざわざ、表側からボルトで締める意味がなくなります。ねっ、ぴったりでしょ。

接ぎ合わせるに際し、汚かった裏側は、固く絞った雑巾で拭いたり、板厚に余裕がある所ではスクレーパー掛けをし、きれいにしました。



新しくつくったギブスも含め、全体の具合を見るためにを装着。



『備えさえあれば憂いなし』、道具が準備できれば、接着の実践。
こんなギブスですが、これで底面の水平度は保たれます。
(当たり前のことですが、ギブスの底辺は水平ですからね。)


安定させるために、上下、半分ずつ貼ることにしました。

こうやってアーチの形をしっかり整えておいてから、旗金を使って左右から締めつけ、ジョイントしています。

内型も準備しますが、ご覧のように前回つくったものを合わせてみて、
今回のものの方が少しだけふっくらタイプでしたから、
これを、うまく修整して使うことにしました。

『大は小を兼ねる』は一般論、これは内型ですから『小は大を兼ねる』という、
「その逆も真なり」でした。


上下はほぼ同じ、インナー部とルーア部がすこし小さめです。


大先輩にあたる、他人様のつくったものを批判するわけではありませんが、裏側の削りがとても荒く、そのことは気になっていました。

とくに、C部ブロック周辺の削り残しが多いと感じていましたし、バスバーも、どうせ現代チェロの標準的な大きさ、厚さから比べるとだいぶ小さく、細いもの。ですから、これは標準なものに取り替えるので、この段階では剥がしました。


ノミ跡がひどいところはスクレーパー掛けしてならしましたが、ご覧のように、リブを貼る際の糊代になる、 リブ+ライニングの厚さ+エッジの出巾も非常に大きく、結果として削り残しのようにも見えます。

私が書いた鉛筆の線ほどでも本来なら十分、その点も修整する。


しかしながら、この製作者はあまりスクレーパーを使わない人だったか、 あるいは当時、日本人製作者としては、まだスクレーパーなどは普及していなくて、身近になかったとか?ともかく仕上げは荒い。

余談ですが、自分もヴァイオリン製作を始める前は、これほどスクレーパーを多用したことはありません。 だから、最初は「こんな道具は、いかにもケトウ(外人)好み」だと、バカにしていたほど。 それが、使い始めてからは、『これはいい道具』と、まったく真逆な反応。刃が、底辺に対して垂直にはめ込んである、 台直しカンナ の削る理屈と同じ考えで、ほんの僅かな厚さでも削れるという優れものだったわけ。
右側のふたつは、筆者専用のお手製スクレーパーでよく切れますよ。


悪い部分のアップの写真。ノミ跡はそのままだし、しかも木の逆目によるささくれもあちこち見えています。

中央の接ぎ目には、補強のためのパッチを貼るし、荒い下地のままでパッチを接着しても、 接着面・全体が均等に貼られないため、しっかり貼られる保証はまったくありません。


白っぽく筋に見えるのは、ノミ跡の山の部分だけをスクレーパーで削りおとし、なだらかにならしたところ。

これは、上部の周辺部ですが、板厚が現代の標準的な厚さから比べてもかなり厚めでしたから、 気になっていた所でもあるし、ここは、標準的な厚さに近い、約4.1mmまで削りました。

ローア部はもっと厚く、豆ガンナでゴシゴシと削り、スクレーパーで仕上げ、ならします。スクレーパーではなく、カンナが使えるほど、厚さにはだいぶ余裕がありました。

これだけ削っても、まだ5.4mmもあります。
下の周辺部だけは、やはり4mm程度にはしたいです。
ここにきて、当初、Oさんから『このチェロ、ちょっと重い気がする』といっていたことが思い出されました。
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