第103回原宿句会
平成10年1月12日 赤坂アビタシオンビル

   
兼題 オリオン座 数の子 十日戎 席題 雪


       東 人 
去ぬるとき腰より崩れ雪女郎
大海に足を踏んばりオリオン座
雪嶺といふ雪掻きの要らぬもの
数の子や風の尖れる番屋跡
みかけよきものにあやかり戎笹

        白 美 
ぼちぼちが挨拶がはり初恵比寿
山の背の陣より出でてオリオン座
粉雪や棚に預けるハイヒール
数の子や一度は見たき親の顔
寒牡丹絵島引かれて行くを見ゆ

         希覯子 
三つ星や潮待ち船の灯を漏らす
初夷一姫二太郎従へて
数の子や石女として偕に老ゆ
雪眼鏡皓歯美人をつくりけり
枝ぶりのよき福笹を選びけり

        隆  
数の子や生まぬ女の歯切れ良さ
冬ざれや果てるともなき長き貨車
粉雪の烟る音吸ふ常夜灯
初戎深夜のアムラー鯛を釣る
オリオンの話にのって旅に出る

        千恵子 
オリオンや起重機の腕伸びしまま
雪の舞ふ墓苑の香華彩々に
「吉兆」の声に煽られ初戎
数の子を噛んでやうやく真顔なり
凍み漬菜ハリハリ噛んで山の宿

        利 孟 
七種や桶に沈みし荒砥石
数の子の食べ頃ですと留守のメモ
雪積むや緩き軍手の少年工
銀座八丁目そのまた先のオリオン座
宝恵駕に随き酔漢の笹揺るる

        健 一 
背伸びして小判にふれる初戎
重箱に反りし数の子朝の膳
初舞に泣く子の黙る荒き技
オリオン座透ける雲間の星三つ
降り止みて声澄む窓の雪明り

     正 
数の子や未だ還らぬ北の島
雪に泣き雪に笑ひし史話多し
名曲を聴きウィーンの年初め
第九聴く夜のオリオン星座かな
不景気や賑ひ多き初戎

      箏円 
数の子に松葉飾りて重ねけり
しやらしやらと笹の撓ひて初恵比寿
オリオン座夜空に馳せる神話かな
住み慣れし街の家並みや雪の朝
ほの酔ひて二上りにする初調べ