兼題 七種 小正月 雪嶺 席題 懐手 |
東 人 七種や茹でて杯ほどの嵩 雪嶺や職員室の遠眼鏡 粥腹の椅子深くゐる小正月 生国の一盞を賞め懐手 千恵子 懐手腑の辺の温み盗みけり 雪山に抱かれて村は恙無し 谺返すときも動かず雪の山 小正月炉辺の女の独り言 白 美 猫を抱き餅かびこそぐ小正月 雪嶺や弓ひき絞る朝稽古 七草の粥ふつふつと幼き日 駅頭で頬切る風や懐手 千 尋 繰り言も齢の数あり女正月 万葉の佳人近しく七草粥 角を忌む義母の煮〆る丸大根 雨ポツリ見上げてかはす懐手 京 子 策も無しくるみ揉みつつ懐手 鳥の尾も長き影曵く小正月 豆炊いて姉待つ午後や小正月 七草をのせてままごと草の盆 |
内 人 蟇口の軽きを量る懐手 小正月明り障子に猫眠る 青洟の童も見ゆるや七草篭 平成も四年となりぬなずな粥 健 次 手拭も懐手にし露天風呂 雪の山みっつみっつの足の跡 客もなくひとりうたた寝小正月 渓流の音のみ残し雪の山 玄 髪 舟絶えて湖面に鮮や冬の山 痛飲を癒す七種粥苦し 湯の町の客引き避ける懐手 単身の衾冷え冷え小正月 利 孟 飴色の般若の根付け懐手 刻み菜に鍋の鎮まり薺粥 小走りに売る釜飯や雪の嶺 竹筒の赤き丸箸小正月 希覯子 ポストまでサンダル履きの懐手 遠山雪鏡に在りて髪を梳く 着こなしてサリーの妻や小正月 廃れゆくものに七種囃しかな |
重 孝 短めの袖隠しけり懐手 小正月猪口を代わりの茶碗酒 星満天七草粥に舌つゞみ 雪山に亡父の言葉今一度 香 里 酔ひし間に日が暮れてゆく女正月 静けさに身が引き締まる冬の山 太りし身悔やんで笑う女正月 裏通り急いで帰る懐手 武 甲 アルタ前晴れ着行き交ふ小正月 若菜摘む水面突き刺す朝日かな 遠方の雪嶺燃ゆる摩天楼 |