135回原宿句会
平成12年9月5日


   


  翠月
野外能シテは色なき風にのる
吾亦紅手話の少女の前に佇ち
珍品の一つに朱欒売場占め
壁の字の声が聞こゆる原爆忌
夕暮の早き雨だれそぞろ寒

  千恵子
そぞろ寒観音の掌の生命線
夢を見て笑む嬰色なき風つつむ
部屋隅の闇掃きだせばきりぎりす
朱欒提げ月なき道を帰りけり

  美穂子
樹に生るる色なき風や詩仙堂
成る姿知らず朱欒はかく重し
母譲りなる癖多し吾亦紅

  和博
秋暑し風に染みたる錆の色
長崎に今も成りたる祖の朱欒
そぞろ寒首までつかる露天風呂
検校の箏に色なき風わたる

  希覯子
朱欒熟る忍返しの塀の中
尼御前の明窓浄机朱欒垂る
束ね売る仏花の中に吾亦紅
噴煙の島に色なき風渡る
手相見の灯火ゆらぐそぞろ寒

  白美
少年の日々を色なき風渡る
竹刀もて担ぐ胴着や雁渡し
上顎の確かな骨相朱欒売り

  箏円
朱欒剥くじやがたらお春物語
箏の音の色なき風に震へけり
病牀に三月を数へ秋の蝉

  武甲
時忘るプラネタリウム秋暑し
南国の香りを食らふ朱欒かな
湿原を色無き風と渡りけり

  正
船上に飛び交ふ声や朱欒売り
大輪の秋の薔薇剪るダイアナ忌
人の世はつねにひとりやそぞろ寒
配列は入選句数および特選句秀逸句数順