155回原宿句会
平成14年5月7日


   


  東人
賀茂祭牛車に潜む陰陽師
結納の膳に明石の桜鯛
餌を嚥んで翡翠つんと羽繕ふ
アウンサン・スーチー女史の立夏かな
風つかむ天衣無縫の白牡丹

  利孟
黄金週間明けを引きずり大鞄
人の歩を追へぬ牛の歩賀茂祭
牡丹を刎ねその息の生臭し
安倍川餠にぬるき番茶や夏立ちぬ
翡翠や死の道行の土手崩る

  千恵子
藤棚に入りて世の中遠ざかる
牡丹の崩れ真昼の大音響
夏立つや寺に小さな書道展
戻り来る牛の疲れや懸葵
かわせみの消え眦の落ち着かず

  箏円
立夏かなそぞろ歩きといふ速さ
葵祭暗き老舗も彩らる
芍薬は命の色よ右朝の忌
翡翠や魔法学校球技会
花の名は雅の曲や牡丹園

  武甲
雅男の顎鋭角に賀茂祭
境内の順路をたどり牡丹見る
翡翠の来て再生の沼となる
夏立つや芝よみがへるサッカー場
三度鳴る間違ひ電話五月闇

  美穂子
立夏かな路地に胡座の刃物研ぎ
翡翠の水平に切る川面かな
葵掛け牛も役者の祭かな
まづ位置を定め牡丹の綻びぬ
薫風や少女の笑ひ収まらず

  和博
白牡丹一生不犯僧のゐて
亀泳ぐ速さに藤の花の揺れ
漁終へて思案顔なる翡翠かな
斎王の玉の緒絶えし賀茂祭
風孕むスピンネーカー夏来る

  明
ふはり風抱きて牡丹の花白し
琉球を歌ふ乙女に夏立ちぬ
行列に耕馬も混じり賀茂祭
翡翠の射るがごとくに水に入る
競へ馬きりりと並び鞭を待つ

  白美
解き方も子供に教へ粽食ふ
夏立ちぬ魚釣禁の立看板
緋牡丹や安碌山の狼煙見え
水音を残し翡翠木の陰へ
葵祭笑み愛しきやし女人列

  正
翡翠や衣装好みは母譲り
瓜実の佳人に出逢ひ賀茂祭
牡丹燃え大和三山との曇り
山路来てほのかにかをる緑かな
教室より洩るる唱歌や夏来る

  翠月
葵祭ぐらり牛車の軋む音
翡翠の息抜き知らぬ動きかな
夏立ちぬ色軽やかな峰続き
散策を留める巷の白牡丹
夏料理浜辺の味のハーモニー