153回原宿句会
平成14年3月4日

   
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  東人
逃水の瀬戸大橋を渡り切る
父の忌の父の文机四温光
芥子菜を和へて独りを噛みしめる
内裏雛背合せに納めけり
巷めく北方四島地虫出づ

  希覯子
四股を踏む少年相撲や地虫出づ
雛納め古新聞に虚子選句
逃げ水や野生動物注意板
芥子菜や荒川土提に野生化す
百軒の人形の町雛納め

  美穂子
紙雛のそこだけ目覚め入院棟
啓蟄の土に馴染みし白軍手
芥菜と煎茶で締めの名物膳
逃げ水や車夫半纏を泳がせて
雛納め出入り少き部屋となる

  千恵子
逃水や疑ひ深くなる齢
蒼きまま暮れゆく空や春筑波
雛納めした夜の部屋の洞めける
観音の御目に罅や地虫出づ
茹で上げし辛子菜蕾黄の滲む

  正
雛納め雛に還暦古希の無く
逃げ水やのらりくらりの答弁書
露天湯や遥かに由布岳の斑雪
ほろ苦き芥菜噛んで母の味
啓蟄の王府井に人の群

  和博
芥菜や暖色の絵を遠く見る
印結ぶ指の白さや雛納め
啓蟄や追ひ風欲しき兜町
ジーパンの洗ひざらしや春うらら
逃げ水や昔は我も向ふ見ず

  武甲
樟脳の徳用袋雛仕舞ふ
啓蟄や鼓笛の音色ぎこちなく
地に青き星の瞳やイヌフグリ
逃げ水に先導されて国を出づ
芥菜をきはむ精進料理かな

  箏円
芥菜や土間に馴じまぬ簀の子板
思ふことすこし遠のき雛納め
杉の花見おろしてゐる藪の中
逃水や国分尼寺跡造成す
春来るを拒む心も我が身かな

  白美
芥菜を括りつけての行商婦
逃水や独歩歩きし道は無く
槍や矢の既に紛れて雛納め
大福の売り切れの札春なかば
啓蟄やいづれの虫も踏まずおく

  翠月
呼ぶ声の響きて春の障子越し
啓蟄や手にしつとりの井戸の水
芥菜の憂ひを含む黄十字
逃げ水や在すや牧場子馬馳け
さまざまな小箱の山や雛納め