156回原宿句会
平成14年6月4日

   
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  東人
 
島津公朝鮮出兵
戦死せし猫の墓碑銘合歓の花
篝火の影の魚めく鵜飼かな
木天蓼の全葉白を極めけり
雪解富士山は高さをあがめられ
水無月の堂守髯を蓄ふる

  千恵子
目裏に火の粉のほてり鵜飼果つ
夏富士の影を濃く抱き湖開ける
アプト式ありし鉄道合歓の花
脱ぎ切れぬ葉の腰にあり竹育つ
六月の湖山上に静かなり

  白美
水無月や付箋ばかりの執務録
鵜の目より鋭き鵜匠の眼かな
轟音をさせて戦車の雪解富士
折鶴のいろとりどりや合歓の花
咲く花の裏は蕾の扇子かな

  武甲
減俸の異動内示や梅雨にいる
写メールで詫びる遅刻や合歓の花
川堰の賛否両論鵜飼かな
パノラマの樹海に浮かぶ雪解富士
水無月やフェイスペイント流行る国

  正
巻き舌に捲し立てられ薄暑かな
鵜飼果て川は寂しさ取り戻す
化粧無き素顔も美しき夏の富士
合歓蔭に輪車の休む北京かな
合歓の花太白空にありにけり

  利孟
ペディキュアの首尾良く塗れて薄暑かな
水無月の塩羊羹の薄甘み
雪解不二三島女郎の朱のしごき
引き出さる鵜のじたばたと蹴る鵜籠
眉掃きの合歓に灰降る桜島

  和博
麓より色押し上げて夏の富士
鵜篝の手妻のさばき映しけり
乙女らの歩みゆつくり合歓の花
蛍や草葉の陰と言ふところ
水無月や夫婦喧嘩の果ても無し

  美穂子
合歓咲くや項に恋の予感あり
水無月の風のくぐもる切通し
きらめくは鵜の涙とも篝燃ゆ
白雲の遠慮がちなる雪解富士
青葉より洩る光繰り水車

  翠月
疲れ鵜に情け無用の綱さばき
合歓の花抱く山荘の昼深し
三尺寝夢持ち逃げのバイク音
夏富士やすつきり纏ふ黒衣装
水無月の薄雲の中夕日落つ

  希覯子
特急の徐行区間や合歓の花
富士見ゆと機長が知らす夏の旅
提灯に織田の家紋や鵜飼舟
六月や話題はなべてワールド杯
竹林の七賢いづこ竹の秋

  明
水無月や空一呑みの球技場
鵜篝や舞台役者の裏表
十薬や闇の声聴く女かな
まぶた閉づされど眠らぬ合歓の花
筆取りし時に薄暮の雪解富士

  箏円
青富士や指でなぞりし空の中
郭公の声に目覚めをやまよひぬ
人ごころとらへてかなし鵜飼かな
古りし家をあけ渡す日や草引きぬ
道のりは休みもありてねむの花