157回原宿句会
14年7月3日


   


  東人
梅雨寒や口をへの字の狂言師
夏服の噂の英語教師来る
短夜や出漁告げる浜花火
無名峰のケルンに古き殉難記
ががんぼや祖父は優しき声掛けず

  利孟
白服の車掌小銭を鳴らし来る
穴子獲り一夜仮寝の筒仕掛け
短夜や狭き毛布の寝台車
メビウスの輪めく茅の輪をくぐりけり
背伸びしても積めぬ高さの大ケルン

  千恵子
文字小さきお詫び広告梅雨の茸
二の腕の筋肉自慢夏の服
明日越える岳霧隠れケルン積む
穴子食ふ善男善女のクラス会
短夜や見知らぬ人と夢に居て

  白美
短夜や開かずの部屋のある館
先達のケルンに小石積み加へ
ネクタイをゆるやかに締め夏衣
  千駄木・乃池
汐見坂三崎坂の穴子鮨
廻る順頭に入れて茅の輪かな

  和博
この先は地獄の上りケルン積む
もう二度と目覚めぬ人や明易し
夏服や金髪似合はぬにきび面
穴子連れ波に突き出る穂先かな
長いもの何でも好きで穴子焼く

  武甲
江戸前の家伝のたれや穴子裂く
黒南風や法衣に隠すコルセット
夏服や結び目ゆるき胸リボン
短夜や半鐘たたく音忙し
縦走の安否気遣ひケルン積む

  翠月
夏服や背筋に風を着るここち
短夜の読書は遅し刻早し
よか味や関西弁に合ふ穴子
ケルン前グループみんなVサイン
素朴さの森の飾りや山帽子

  美穂子
退院の日の夏服を新調す
短夜や声なく覚めし母の夢
辿り着くケルンたちまち雲の中
穴子鮨買ふや似合ひの老夫婦
梅雨深しアンコールは「オー・ソレミーオ」

  正
金婚の席に穴子の夫婦串
短夜のオスロに古りし音楽堂
濃淡の四葩に山の冷気かな
花束のケルンの脇に置かれをり
麻服に葉巻燻らす老紳士

  箏円
穴子鮨ひとつつまんで寄席の客
萍や漂ふ先を見定むる
夏服の糊のまぶしく朝電車
山頂の祠はケルンに囲まれて
捩花の風にまはりて雲を突く