第184回原宿句会
平成16年10月5日

   
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  美穂子
秋の雨映画悲恋で終りけり
湿りたる香りの畳十三夜
塗り立てのペンキに秋の陽の濡れて
影だけになりて鯔飛ぶ日は西に
野球帽かぶり卒寿の薬掘り

  白美
鰡の飛ぶ河クレーンの黒き影
秋霖や鳥の籠りし御神木
腹押せば歌ふ人形長き夜
薬掘り腰にラヂオを響かせて
音を追ひ踊るタンゴや十三夜

  正
秋入日駱駝は長き影を曳き
鰡飛ぶや文明開化は出島より
路地裏の店の小窓や十三夜
秋霖や墨絵のごとく山烟り
木曽谷に樵夫と出逢ひ薬掘る

   美子
貝汁の殻の開く音十三夜
薬草にまだ花あるを引きにけり
秋雨の音を聴きつつ歯科医院
鶉食ふ考古学者と武道家と
そつけなく鯔のこといふ魚売り

  武甲
古代史の謎解く話十三夜 
赤い羽根つけ教壇の実習生
鯔飛ぶや監視カメラに人の影
腰の鈴手の鈴鳴らし薬掘る

  千恵子
掘りて来し薬草軒に尼の寺
潮の香のこもる湯の町十三夜
機窓より月低く見て旅の果
夕焼けのあふれる湾に鯔の飛ぶ

  利孟
薬掘る父の刻みし鉈目痕
別売りの瓶に買ふ酒十三夜
車寄せまでの絨毯秋の雨
鯔飛ぶや利根渡良瀬を呑むあたり
空つ茶と駐在に出す濁り酒