第23回原宿句会
平成4年6月24日

   
兼題 サルビア みつ豆 雨乞
席題 羅


            東人
サルビアの群れて種族の炎を放つ
雨乞の島に山なき峠かな
姉ふたりゐて蜜豆と縁遠し
羅や写真の隅の金の文字

            利 孟
雨を乞ふ龍神太鼓たけだけし
蜜豆や四股名大書の紙袋
あんみつやさくらんぼうの種と蔕
縁石の跳ねの乾きてサルビア咲く

            美 子
蜜豆の豆食はぬ友夭折す
サルビアに燃え立つほどの過去もなし
深酒の抜けぬ男の祈雨の舞
蜜豆を盛る大正のガラス鉢

            京 子
みつ豆やギヤマン小鉢万華鏡
サルビアの縁取る辺り野の仏
うすものを纏ひ外通る若さかな
雨乞ひの舞楽朗々地を這ひて

            希 覯 子
サルビアや飯場に人の気配なく
雨乞や一寺一社の谷戸の村
蜜豆や飛騨の匠の椅子卓子
羅や汝の知らざる背の黒子

            千 恵 子
羅や女背中で意地通し
サルビアに留守を守らせ妻外出
水色の彌宜の袴や雨神事
旅終る駅で蜜豆食べており

            武 甲
万葉の踊り装束雨祈る
サルビアの朱の増す壁や蔵の町
羅やボディーラインを子に言はれ
蜜豆や若貴談義の女学生

            英 樹
羅のひとに続けり女人堂
雨乞のまっすぐ上がる煙かな
みつ豆や小町通りをそぞろ来て
サルビアの蜜吸ふ児らや小糠雨

            明 義
蜜豆や匙掬ふたび髪搖れて
羅や灯り連なる商店街
みつ豆屋求めてそぞろ神楽坂
みつ豆を間に女の愁ひ聞く

            白 美
雨乞や農夫のしはの縦に在り
蜜豆や毀れ時計の鳴りさうな
くれなゐの羅をまとひて旅の航
サルビアや貧しきなりの男女かな

            香 里
蜜豆の赤色のこし食べにけり
雨乞や早く見つけてかくれんぼ
羅や鏡に写す身だしなみ
蜜豆や急いでもとる昼休み

            重 孝
サルビアの花鮮やかに雨あがる
雨乞をせんと村人笛太鼓
羅の胸のふくらみかくしけり
蜜豆を頼んだおのこ恥かしげ