兼題 夕立 カンナ 蛍 席題 蠅叩き |
東 人 点滅を地に伏せてをり蛍篭 夕刊の来ぬ祖父の郷蝿叩き 夕立や俄かに老けし遅れ客 カンナ咲く堀の向かふの麹室 千 恵 子 藁筒の蛍土産に佐渡帰り 眼帯の奥で夕立聞いてをり 無人駅カンナ駅守る如く立つ 道黒く染めて夕立去りにけり 千 尋 診療所縁のほつれし蝿たたき グラウンドの隅で球音吸ふカンナ 社まで連れ添ふ道や初蛍 夕立やゐしまま目凝らす針仕事 希 覯 子 状差しに蝿叩きさす山の宿 白雨来る寺の廂の深からず 国境や彼我にカンナの咲き乱る 蛍飛ぶ椿山荘の近ければ |
英 樹 蛍火や少女のうすき掌の中に 夕立や橋のむかふにけふの宿 一ト振りに腰頼りなき蝿叩き 黄のカンナ咲かせて犬の美容室 利 孟 白線の薄れし走路カンナ咲く 編み終へし青き棕櫚葉の蝿叩き 借り物の長靴湿る蛍狩 下着着ぬマヌカン人形夕立かな 白 美 蛍火を追へば刃となる闇の草 諍ひの突然止みて蝿叩き 夕立や相席客と蕎麦湯飲む 白川郷家深閑とカンナ燃ゆ 玄 髪 藤原の雅の屏風に蝿叩き 大夕立袖すり合はす南大門 放課後の夕陽に燃えるカンナかな 阿闍利谷闇に群れ飛ぶ蛍かな |
京 子 ぎこちなく着初めの一歩蛍舞ふ 廃鉱に陽は降り積みてカンナかな 夕だちの蹴散らす人波法被の子 内 人 夕立や単身赴任碗洗ふ 夕立や梳る髪すなおなり 眠る子の背をさする手に蛍かな 教へ子の帰りたる教室カンナ咲く 明 義 夕立やタワーの灯り天を染む 夕立や葉の浮く侭に露天風呂 夕立や稜線遥か田舎駅 夕立や待つ人想ふ軒の下 美 子 蛍来て大きな息の火を放つ 七夕の真ッ赤な月へ紙の鶴 それぞれの眼の明暗へ追ふ蛍 鳥の眼の激しさをもちカンナ咲く |