第31回原宿句会
平成4年12月16日

   
兼題 雪催 蕪 師走 席題 胼・皸


            東 人
箸置の織部の瓦蕪汁
皸や片手で受ける熨斗袋
鉢穴の根曲り白し雪催ひ
山積みのシューマイ弁当師走かな

            白 木
水切ってより色戻る緋の蕪
漉舟や師弟に同じ胼のあり
特急を待ち合はす間の雪意かな
ジッポーの男と隣る師走かな

            千 恵 子
皸や膏薬袋の太き文字
蕪炊く友のやさしき京訛
雪催ひ母に便りを書くべしや
家々の玻璃輝きて師走かな

            白 美
胼の手で開く子供の字引かな
切れ目なき電光ニュース師走空
古手紙ポケットにあり雪催
両の手に洗ひ蕪や赤い月

            希 覯 子
京なれや蕪の名にも聖護院
歩道までワゴンセールや街師走
都庁舎に洩れ灯少なし雪催ひ
朝市や売り手買ひ手のあかぎれて

            梅 艸
とっぷりと師走闌けゆく酒二合
レジ遠し小蕪に白きバーコード
柔らかき肉片潜む蕪汁
雪降れど雪催なき街に住む

            香 里
極月の両手をふさぐ紙袋
極月や母の小言の早口に
憂欝に出張帰りの雪催
皸のもじもじ動く足の先

            武 甲
雪催ひ肩で息する豆剣士
義士眠る寺に声ある師走かな

            利 孟
極月や息吐きかけて判を押す
極く薄う切りたる蕪塩で喰ふ
追分の詞のかもめ島雪催ひ
皸や刃ばかり光る花鋏

            内 人
信楽の狸の里の雪催ひ
雪催ひオルガンの音分教場
雪催ひ砂場に輪書く一人っ子
極月や喪中の知らせ歳ごとに

            京 子
切り張りの花びら黄ばむ師走かな
あかぎれとぬる湯琺瑯縁の青
雪催ひ背にほっこりと児の暖み
かき寄せる緋色のショール雪催ひ

            玄 髪
袖通し皸糸にひっかかり
朝粥の湯気ゆらゆらと雪催ひ
お隣の嫁の愚痴聞き蕪漬ける
不夜と化す大蔵省の師走かな

            重 孝
通夜がへり熱燗求める雪催
泥落としつるつる素顔の蕪かな
一ト月が二十日で終はる師走かな
皸に母のいきざま垣間みる