兼題 雪催 蕪 師走
席題 胼・皸 |
東 人 箸置の織部の瓦蕪汁 皸や片手で受ける熨斗袋 鉢穴の根曲り白し雪催ひ 山積みのシューマイ弁当師走かな 白 木 水切ってより色戻る緋の蕪 漉舟や師弟に同じ胼のあり 特急を待ち合はす間の雪意かな ジッポーの男と隣る師走かな 千 恵 子 皸や膏薬袋の太き文字 蕪炊く友のやさしき京訛 雪催ひ母に便りを書くべしや 家々の玻璃輝きて師走かな 白 美 胼の手で開く子供の字引かな 切れ目なき電光ニュース師走空 古手紙ポケットにあり雪催 両の手に洗ひ蕪や赤い月 |
希 覯 子 京なれや蕪の名にも聖護院 歩道までワゴンセールや街師走 都庁舎に洩れ灯少なし雪催ひ 朝市や売り手買ひ手のあかぎれて 梅 艸 とっぷりと師走闌けゆく酒二合 レジ遠し小蕪に白きバーコード 柔らかき肉片潜む蕪汁 雪降れど雪催なき街に住む 香 里 極月の両手をふさぐ紙袋 極月や母の小言の早口に 憂欝に出張帰りの雪催 皸のもじもじ動く足の先 武 甲 雪催ひ肩で息する豆剣士 義士眠る寺に声ある師走かな 利 孟 極月や息吐きかけて判を押す 極く薄う切りたる蕪塩で喰ふ 追分の詞のかもめ島雪催ひ 皸や刃ばかり光る花鋏 |
内 人 信楽の狸の里の雪催ひ 雪催ひオルガンの音分教場 雪催ひ砂場に輪書く一人っ子 極月や喪中の知らせ歳ごとに 京 子 切り張りの花びら黄ばむ師走かな あかぎれとぬる湯琺瑯縁の青 雪催ひ背にほっこりと児の暖み かき寄せる緋色のショール雪催ひ 玄 髪 袖通し皸糸にひっかかり 朝粥の湯気ゆらゆらと雪催ひ お隣の嫁の愚痴聞き蕪漬ける 不夜と化す大蔵省の師走かな 重 孝 通夜がへり熱燗求める雪催 泥落としつるつる素顔の蕪かな 一ト月が二十日で終はる師走かな 皸に母のいきざま垣間みる |