兼題 寒蜆 金縷梅 隙間風 席題 寒晒 |
東 人 センター試験了る せつせつと自己採点や隙間風 殻の斑の湖ゆづりなり寒蜆 黒板に残る符牒や寒晒 金縷梅の彩裏がへす風のあり 梅 艸 寒蜆黒き肩寄せ砂吐けり 寒蜆湖泥豊穣太き腹 隙間風憎みて窓を開け放つ 逢へぬまま金縷梅尽きて午睡かな 白 木 手秤の一掴み足し寒蜆 寒蜆笊よりこぼす日の光 まんさくの父の山より咲き始む 隙間風乞うて少しの酔とあり 京 子 まんさくは残りの雪を画布にして 身の末はいかなる化粧寒晒 「小言の座」背を這ひ昇る隙間風 気ぜわしき朝の箸先寒蜆 希 覯 子 金縷梅や不老の井戸は竹圍ひ 寒晒干すもの多き蜑の家 仮通夜の霊安室や隙間風 寒蜆軽トラックの売子かな |
千 恵 子 水底の闇吸ひ上げて寒晒 隣室の祖母の独語やすきま風 金縷梅や土蔵白壁暮れ残る 寒蜆かこち顔なる羅漢かな 利 孟 寒晒滑車を残し閉ざす井戸 レコードのうねりのゆるく隙間風 谷水で沸かす紅茶や金縷梅花 石積に手つきて拾ふ寒蜆 内 人 寒晒祖母の手水にためらはず 酔ひ醒めの汁にくろぐろ寒蜆 綿埃ころりころころ隙間風 寒蜆唐崎の松老いにけり 重 孝 空澄みて目にしみわたる寒晒 ひとしきり金縷梅の花子等のこへ またひとつ虚勢を張りぬ隙間風 升のなかぬくもり詰めて蜆売り |
白 美 半時の早起きをして寒蜆 落ち針の曲がりたる糸隙間風 界隈と呼びたき街の寒晒 金縷梅のこぼれる獄舎煉瓦塀 美 子 寒蜆艶々として掻き出され 顔面に薄き闇あり隙間風 寒蜆洗ふ指より目覚めけり 盆植ゑの金縷梅眺む武家屋敷 英 樹 金縷梅や蓑笠かかる飛騨民家 ふつふつと寒蜆煮る微酔かな 三人の姉のゐし部屋隙間風 香 里 寒晒突掛捜す勝手口 寒蜆ボウルの中の舌つつく 隙間風久しぶりなる母の家 下宿先夜通し話す隙間風 武 甲 隙間風雑魚寝してゐる四畳半 金縷梅を愛でし父逝く雨の朝 寒蜆藍のもんぺの行商婦 殻の斑の湖ゆづりなり寒蜆 |