兼題 連翹 東風 鬼やらひ 席題 初午 |
東 人 連翹や腰から朽ちるドラム缶 灯をすこし消してはじまる鬼やらひ 路地奥のさらの幟や一の午 朱で塞ぐ石狐の耳や東風の河岸 利 孟 連翹や鋳物の脚の庭机 東風わたる蛇の玩具の竹の節 鬼やらひ目尻の墨につぎし紅 初午やセロファンかさと林檎飴 英 樹 東風吹くやをんなの耳に金の鍼 初午や出雲来間屋生姜糖 連翹の雨に覚めたる川面かな 金星の見ゆる大窓鬼やらひ 白 美 鬼やらひ父の眼笑ふ紙の面 連翹やダビデのレリーフ美術室 初東風やゆっくり新聞めくる音 蒸し饅の立ちのぼる湯気午の市 |
美 子 強東風や路地の地蔵の白化粧 節分の焼鰯買ふ列に入る 丹田に気を貯めて立つ鬼やらひ 黄の連翹皇太子妃の現わるる 希 覯 子 初午や幟新たな屋敷神 追儺豆電気掃除機丸呑みに 強東風や潮待ち船の双錨 連翹や展示ハウスの小庭持つ 千 尋 初午や碧眼美女の売る腕輪 東風ふくむスカーフに頬よせてみる 面のひと恐ろしく見ゆ鬼やらひ 乳母車の子をあやすなりいたちぐさ 千 恵 子 鬼やらひ鬼に抱かれて泣く子かな 映画館出て強東風に吹かれけり 連翹や人待つ座敷の端居かな 初午やビルの谷間に祠置く |
武 甲 鬼やらひ声張り上げて照れ隠す 強い東風や大願成就の声届く 節分や単身解除の声弾む 初午や社の杜の旅一座 京 子 初午や眠る子の背に狐面 年女ここ一番の豆を撒く 鬼やらひ鬼打つ豆の乱調子 明りゆく山潔し東風渡る 香 里 初午や尻からかじるリンゴ飴 強東風や母の戸締りもう一度 連翹や掛け声そろへランニング 鬼やらひ面の下まで恐い顔 千 里 朝東風や大和三山雲渡る 夕東風や片膝立てて酒二合 連翹の一枝抱く無縁塚 初午や二拍一礼白き足袋 梅 艸 節分と知る入院食の乳ボーロ 日の丸の燕返しや東風一陣 東風に狎れ白雲に溶け道をゆく |