第36回原宿句会
平成5年4月4日 飯能市民会館

   
        飯能観桜吟行会
西武線飯能駅。割れ石橋・河原・能仁寺・桜祭植木市
・市民会館・飯能神社・飯能旧市街・飯能駅


            東 人
乾きゐし天水桶や花曇
白塗りの軒の木口や鳥曇
ここよりは各驛停車花大根
花衣男斎木を撫してゆきにけり
花散るや手相をさらす阿形像
芽柳や葭簀のなかの行き戻り
花蘇枋火の見梯子は段切られ

            利 孟
野遊びの竈に薄き炎かな
植木市荷台にくくる土袋
芽吹けるや木守りの柿の蔕残し
一流しして鮠釣りの移りけり
白木蓮や火の見櫓に干すホース
赤きリボンふららこ高くたかく漕ぐ
バス停の古き桜の盛りかな

            杜 子
鍋貸して薪は売る店桜狩
咲き満ちて桜の木肌ぬくきかな
春昼や庭に据ゑ置く鬼瓦
幹黒く武州の桜咲きにけり
草木瓜の花の色なり土手の赤
バーベキューの煙あちこち花曇
鳥交る喜志子の歌碑の文字読めて

            英 樹
奪衣婆の真っ赤な舌よ花の冷え
花曇花のかたちの茹で卵
庭園を眺めてよりの花疲
吊橋をくぐりて花の人となり
花曇ホースのさがる火の見台
池底に田螺の道の幾筋も
水草生ふ天覧山を借景に

            伊 代 子
花の宴焚火上手で調理役
咲き満ちてまだこぼさざる花の山
その昔戦の山に青き踏む
花の山童形地蔵に十円貨
花の名をきいて買はずの植木市
拝観の寺苑に一つ落椿
浮島の倒影乱す残る鴨

            麗 水
春風の竹林へ来て音生めり
会の名に石並べ置く花筵
吊橋のはるか低きに花の雲
花冷やモデルは古木かかへたつ
淨財を献じし寺庭水温む
花よりもモデルを圍む人さはに
車輪沈む河原の砂や水温む

            希 覯 子
あめんぼう秘園を己が天下とす
花莚場所の主の小石文字
足跡を消す術知らぬ田螺かな
半弧描く割岩橋や花川原
槻小枝かげろひてをり能仁手ら
残り鴨オロシヤの国を知らざりき
花の下鉄腕アトムいざ翔ばん

            ま こ と
春愁や歪に開くる壺の口
釈迦如来花見酔態みそなはす
蝶翔たし三味線草は風の草
満開の花風を海混み合へる
揺らすほど風の重さの花の枝
見おろしつ満開の花目が無数
風運び去りては戻り花の冷え

            氷 川(渋谷)
バーベキュー約男料理の花見かな
初対面すぐ昵懇の花吟行
ときどきに水面皺めて水馬
築山に読経のひびき春うらら
花曇仏魔を防ぐ阿形の手
水馬脚ふんばって跳ぶ一寸
紅椿落花の色を失はず