兼題 萩 居待月 とろろ汁 席題 落鮎 |
東 人 掃き寄せて紅白の塵萩の門 ピスタチオの割れぬ一粒居待月 落鮎の背びれ並びて光りけり 剃りあとのややむず痒しとろろ汁 白 美 刺繍糸選びつかれて居待月 萩こぼれ間口一間の洗濯屋 棘抜きに錆の浮き出て鮎落ちる 木製の改札口閉ぢとろろ汁 希 覯 子 山門に竹の閂萩の寺 居待月警察寮は武衣を干す 名物にとろろ汁あり平家邑 落鮎てふ和菓子もありぬ長良川 白 木 落鮎の火串に腸の乾びけり とろろ汁ざつとからめて三口なり 三ッ指に迎へられけり居待月 小流れの小さき渦やこぼれ萩 |
利 孟 石寄せて狭む川筋下り鮎 家移りの荷出せし部屋や夏の萩 こぼれやすき道産米やとろろ汁 出汁の色薄きたこ焼居待月 千 恵 子 居待月隣は夫婦喧嘩らし とろろ汁先の剥げたる塗りの箸 落ち鮎のしばし動かず簗の昼 ひそひそと猫来る道や萩こぼる 玄 髪 恨み目の網にかかりし下り鮎 ありし日の父の白髭とろろ汁 長雨に打たれし萩のこぼれけり 今日もまた雲居にもとむ居待月 英 樹 胡坐してジグソーパズル居待月 麦とろや痒くなりたる口の端 せがまれて絵本を開く居待月 萩咲くや筆で書かれし太平記 |
健 次 三方を納戸に仕舞ひ居待月 ハイキングかいなに触れる萩の花 擂り鉢を股にはさみてとろろ汁 握り解きすり抜ける銛落ち鮎に 京 子 庫裡しづか尼僧ふるまふとろろ汁 日向灘嵐のあとの居待月 二つ三つ萩咲き染めし帝釈天 梅 艸 居待月浮かべて海の眠りをり 居待月酔客路上で諍へり 萩咲いて汲み取り口の厚き板 口蓋に山の精満つとろろ汁 香 里 居待月そっと玄関開けにけり とろろ汁精進料理試しけり 萩の野やリュック背に待つバス時間 重 孝 今の我ただただ贅沢とろろ汁 萩前に落とす涙に何想ふ |