兼題 秋の暮 新酒 焼き芋 席題 曼珠沙華 |
東 人 噴霧器で塗るカンバスや曼珠沙華 升の香も含みふくみて新酒かな 愛嬌を素面で流し焼藷屋 墨汁を足して墨する秋の暮 法 弘 秋の暮捨て縄で拭く鍬の泥 焼芋をスプーンで食ふ薬師かな たましひの洗はれ白花まんじゅしゃげ ぐいのみへ口の近づく新走り 千 尋 固結ぶ木綿風呂敷新走り 合はぬ靴履き通したり秋の暮 ひとつはぜ芋焼く燠の白さかな 道行くやまた曼珠沙華そこの丘 美 子 戸口にてまた立ち話秋の暮 新酒下げぶらりと来たる碁打ちかな 門限のごとくにくれし秋の暮 焼芋を割りても与ふ者のなし |
英 樹 秋の暮プレスの音の洗濯屋 ふくみみる新酒に酔いてしまひけり 秋の墓石を切り出す父の島 焼芋屋いつもの角に来てをりぬ 利 孟 曼珠沙華石組み確と一里塚 息かけて袋を開く焼き藷屋 秋の暮尾燈の埋めるシャンゼリゼ 杉の栓せし裸瓶新ばしり 千 恵 子 蔓珠沙華地蔵の口の小さき紅 焼芋の売り声テープのかすれがち 声だして絵本読む子や秋の暮 一応は味はい顔して新酒かな 白 美 焼芋をくるむ競馬の新聞紙 緋の袴擦れて社の新酒かな 煙草喫む農夫の影や曼珠沙華 積み上げしポケットアルバム秋の暮 |
千 里 億ションのちらしで包む八里半 歩きつつ人と離れし秋の暮 石舞台八間離れ曼珠沙華 新酒飲む去年の苦さを碗の底 京 子 焼芋や薪の太さもたのもしき 開演を待ちつつワイン秋の暮 杜氏らの苦労思はる今年酒 武 甲 利き酒の舌でころがす今年酒 病廊に妻の声あり秋の暮 山門の朽ちて苔萌ゆ曼珠沙華 焼芋や常連客の伊達紳士 梅 艸 焼き芋を包む軍手の飴の色 ヌーボーと酔ひ駆け巡って新酒かな 秋の暮れ都市窯変の2秒前 天蓋の鳥ひたぶるに秋の暮れ |