番外原宿句会
平成6年3月12日 奈良二月堂

   
   奈良お水取り吟行

        

            白 美
降らしめよ降らしめよ灰修二月会
振りたてる篭松明に女人沸く
天帝の火遊びに似てお水取

            杜 子
火屑はや炭となりたる修二会かな
群衆の引きて春寒あるばかり
大いなる闇揺すり上げお松明

            美 子
定法の松明急かす鐘の音
内陣の男に見られ修二月会
お松明仰ぐ農耕民の顔

            利 孟
香煙にむせび修二会の女人桟
修二会僧起ちて数珠音激しかり
回廊の煙に搖れて御松明

            千 恵 子
堂走る足音ばかりや女座格子
火の粉払ふ人も大役お水取り
熱燗や人動き出す二月堂

            梅 艸
修二会果て炬火天空に戻りけり
嬌声にほむらいや増す修二会かな

            仁 郎
鹿に泣きし子の成人の春着かな
松明に妻の菩提をたくしたり
あかあかと煩悩を焼くお水取り