兼題 春月 桜餅 木の芽 席題 啄木忌 |
東 人 握力の失せたる右手啄木忌 塩味の湿りて甘し桜餅 手をつなぐ夫婦目で追ひ木の目風 梱包の箱を積み上げ春の月 千 恵 子 清貧が好まれる世や啄木忌 世渡りの下手な男や桜餅 上向くも下向くもある芽吹きかな 憂きことは忘れろ忘れろ春の月 白 美 桜餅ほどよき足の疲れかな 春月や眉まるくかく夜の化粧 黒塗りの椀に浮かべる木の芽かな 利 孟 向き合ひて動かぬ猫や春の月 屋根透けし遊覧船や柳の芽 柳の芽厨を仕切る縄のれん 葉の剥かる音を手に聞き桜餅 |
梅 艸 木の芽道木の芽の竹の雨が打つ 春月をぷるんと掏う銀の匙 続き読もう甘味喫茶の桜餅 法 弘 妖怪ぬらりひよんに会へさうな春の月 胎の児の音波影像木の芽吹く 恋が愛に変はる予感や桜餅 京 子 新宅に花一輪や啄木忌 思惟像の指思わせて木の芽立つ 桜餅包み売る手の爪紅 星々を引き連れ春の月凛と 千 里 薄雲の動かざる空桜餅 うす皮の饅頭食らふ春の月 春月や上野の池の鳥照らす |
美 子 家移りの家族が消えて春の月 桜餅かうして食べてゐる齢 木の芽風坂の途中に地蔵堂 桜餅下げてぶらりと骨董屋 希 覯 子 ぐい呑みとまごふ器や木の芽和 諳んずる歌十首あり啄木忌 微醺あり歩くを誘ふ春の月 桜餅ひさぐ言問ひ団子茶屋 武 甲 春月や慶事の近き朱塗り門 教室に小さき笑み満つ啄木忌 ジョギングの掛け声増して木の芽ふく 桜餅売り子の声の晴れ晴れと 浄 戻り景気願かけ幾度木の芽ふく 入社式やうやく暮れて春の月 裾上げて石段駆け上ぐ桜餅 |
英 樹 春の月チェロを抱へて駅降りる 児らの喰ふ酢昆布匂ふ春の月 寄席跳ねて下町の風桜餅 チョコの香の菓子工場や木の芽風 加藤春樹 待ちわびる老母は伏して木の芽風 児らの喰ふ酢昆布匂ふ春の月 寄席跳ねて下町の風桜餅 チョコの香の菓子工場や木の芽風 |