第５２回原宿句会
平成６年４月２１日　電事連

　 　

兼題　鱚 菖蒲 立夏 席題　桜貝

東 人 尾の撥ねし鱚てんぷらを食おうか 街騒の入らぬ窓明け菖蒲の湯 一匙に果肉したたる立夏かな 波に石投げし人妻桜貝 　 　　　　　　　　　　法 弘 鱚を釣る陸ことごとくタンク群 砂踏めばすぐ浸む水や桜貝 水ぎはを霽れゆく煙雨白菖蒲 ことのほか白し夏立つ日の腋窩 　 　　　　　　　　　　利 孟 ぴん鱚の笊に朱書きの値札かな 夏立つやシトロンの香の除光液 濡れし裾からげたる手や桜貝 菖蒲湯やブリキの金魚腹で浮く 　 　　　　　　　　　　希 覯 子 砂浜に出店の区割り夏来たる 櫻貝わが青春は戰どき 菖蒲葺く合掌づくりの民家園 船頭の料理自慢や鱚づくめ

香 里 ポケットの砂をはらひて桜貝 夏来るショートカットの白き襟 糸を引く手応確か鱚二匹 白菖蒲ぴんと伸びてる葉も茎も 　 　　　　　　　　　　美 子 線描の女の微笑夏来る 菖蒲の湯転居の数を復唱す 地球儀の赤道なぞり桜貝 焼鱚の硬直したる皿の上 　 　　　　　　　　　　千 里 濃く淡く映す陽射しの菖蒲かな すれ違ふシャンプーの香ぞ夏来る きりきりと釣り糸たぐる立夏かな 朝帰り抜足差足菖蒲風呂 　 　　　　　　　　　　浄 天つゆを含んで白し鱚二匹 夏立つや緑のフィルター街に映ゆ 幼き日再会想へど桜貝 保育器に菖蒲一束親祈る

千 恵 子 廂翳地に濃くなりて夏来たる 海の蒼弾いて鱚の釣られけり 桜貝拾へば遠き記憶かな 店先に菖蒲咲かせて小商 　 　　　　　　　　　　白 美 足裏で砂蹴り上げて鱚を釣る 薄紙を透して淡し桜貝 菖蒲刈る幼子背負ふ媼かな 初子得て鱚三枚におろしたり