第63回原宿句会
平成6年11月11日

   
兼題 秋桜 鶉 末枯れ
席題 神の留守


            東 人
竹林の奥まで寺領鶉篭
瀧飛沫消え瀧壷の末枯るる
誓子論語る人減り神の留守
根より伸び根よりも赤し秋桜

            希 覯 子
埋め戻す発掘古墳末枯るる
神の留守巫女は日課の拭き掃除
コスモスや小廻りきかぬ縄電車
うねる径古利根川原鶉翔つ

            美 子
鶉飼ふ父を疎みし反抗期
勲章を失くした話神の留守
末枯れに落款古りし句集買ふ
コスモスと同じ背丈に生まれけり

            法 弘
またの名をダンプ街道秋ざくら
卜金に追はれる玉や神の留守
郵便夫来て長話鶉篭
鳥野辺を雨は斜めに末枯るる

            利 孟
わし掴みして野へ放つ鶉かな
手に旗の勝利走行末枯るる
干し物に現れし蒸気や神の留守
清澄といへコスモスの薄き紅

            英 樹
少女らの靴下ゆるむ秋桜
末枯や狩猟の犬の木版画
コスモスや琴の楽譜に琴の爪
鶉鳴く少しゆる目にボタン付け

            千 恵 子
そこにあることがやさしや鶉の目
コスモスや飛行機雲は天心に
蝋燭のよく燃える日よ神の留守
末枯れや犬の瞳に映るもの

            京 子
末枯るる野を切り分けて鐘の塔
捕らはれて育つ嘆きか諸鶉
秋櫻身を張りつめて風の中

            白 美
神の留守田舎芝居の鍔の音
年満つと退職通知秋桜
野菜盗る盗人もいて鶉かな
末枯れの山頂丹塗りの天神社

            千 里
末枯や大和三山薄日さす
末枯れや鉄路見つめる転轍手
細きものひと揺れの影あきさくら

            玄 髪
飛車揺れて麓一面秋桜
末枯やトラブルショット素通しに
秋桜群れても風のなすがまま

            萩 宏
神の留守宝剣岳に荒む風
秋櫻エラーした子の球隠し
身を伏せる夫婦鶉に川の風