平成6年忘年句会 兼題 鴨 敷松葉 年の内 席題 寒の水 |
東 人 かをり良きリップジェリーや年の内 育ち良き栽培セット寒の水 ハンターの息のむ高さ鴨群飛 風やんで組みのほどよき敷松葉 千 恵 子 ポケットに触れるメモあり年の内 尼寺に音なき昼や敷松葉 ひらひらと月の張りつく寒の水 鴨の来る川あり家居の日々静か 利 孟 年の内ピザの切れ目に垂るチーズ 薬鋏の赤の散らばる鴨猟場 鴨汁の土鍋おろしてなほ煮立つ 池底に一円玉や敷松葉 希 覯 子 年内を約す職人気質かな 銅の龍が吐き出す寒の水 茶庵まで数歩の距離に敷松葉 鴨料理自ら任ず鍋奉行 |
京 子 鴨の頚青を深めて風の中 乾物屋路にせり出す年の内 敷松葉天目茶碗の釉溜り 敷松葉「残月亭」へ石づたひ 美 子 敷松葉茶杓の銘に「捨小舟」 鴨食べて肌をしつとりさせ眠る 寒の水突つく鴉の嗄れ声 帰宅時の庶民溢れる年の内 杜 子 ひたひたと水を押しゆき鴨の陣 寒の水見るさへ体ふるへけり 不義理二つ三つほどありて年の内 敷松葉塩瀬の帯のお正客 英 樹 年の内オープン近き歯科医院 戻り来し紙ヒコーキや鴨の池 鴨の池パントマイムの手風琴 堂裏の濡縁高し敷松葉 |
武 甲 去年よりも餌の嵩増す鴨の池 小坊主の朝告ぐ声や敷松葉 アメ横に殺気だつ声年の内 覚めやらぬ我身を冷ます寒の水 香 里 寒の水絞る茶巾が音をなす 年の内テレビの裏の埃とる 年の内郵便局で並びをり 鴨を決め息をひそめて狙ひ撃つ 白 美 衣擦の音遠のきて敷松葉 一滴も余さずに呑む寒の水 随行も主もなくて鴨の群 宝くじ求める列の年の内 博 道(吉野) 敷松葉雨音消えて軒しづく 母も来て障子張りかへ年の内 友が来て酒と炬燵と鴨の鍋 |
千 里 年の内京都西陣機の音 ひそひそと塀越しの声敷松葉 新党の五つ六つあり年の内 尼寺の飛石白し敷松葉 法 弘 鴨吊るや針金通す鼻の穴 来ぬ人を待つはゆかしき敷松葉 年内や寅さんを観て旅にあり みちゆきのけふを末期の寒の水 玄 髪 作務僧の箒走りて敷松葉 考へる前に動けや年の内 品書きに墨黒々と鴨料理 梅 艸 CDの列長々と年の内 落日や湖面に鴨の金環蝕 飛び石を洗ふ樹海や敷松葉 |
萩 宏 月影も音なく封ず寒の水 双眼鏡横切る鴨にピントずれ 躙口赤い鼻緒に敷松葉 いつの日か個人会員年の内 伸 作(伊東) 寒の水歯槽膿漏朝六時 鴨肉の数をかぞへるうちの鍋 初雪ですべってころんで敷松葉 ぶつからず歩けぬ通り年の内 |