兼題 紫苑 初紅葉 秋寒し 席題 蛇穴に入る |
東 人 その下に水漬く象岩初紅葉 秋寒や風呂敷膝に待つ廊下 メドゥーサの髪より抜けて蛇穴へ 花屑をこまめにこぼし紫苑咲く 利 孟 花紫苑駅に仕切りの無き厠 秋寒や書き込み多き式次第 秋寒し日焼けの色の絆創膏 蛇穴に入るやなびけるアドバルーン 白 美 公園の埴輪二体に初紅葉 花紫苑映写機まはる児童館 秋寒や残り一掬琥珀酒 穴に入る蛇に今夜の軒を貸す 翁 莞 音もなく蛇穴に入る旅疲れ 秋寒し引く腰掛けの熱き燗 夕映えに浮きし繁みの紫苑かな |
義 紀 紫苑咲き今日定年の守衛かな 穴惑きのふの夢の続きなど 初紅葉老駅長の大欠伸 うそ寒や工事現場の日曜日 健 次 紫苑咲き背中はバーを揺り落とす 秋寒し書類の山に埋もれ居り 蛇穴に入り高き枝剪定す 京 子 山藤のからむに任せ初紅葉 穴惑ひチロと見せたる舌の先 秋寒し訃報を載せて回覧版 主なき庭に紫苑の丈高し 希 覯 子 継ぎ足しの支柱短し紫苑咲く 秋の蛇「蝮注意」の文字うすれ 秋寒し新車の都電和やかに |
美 子 見ると無く紫をん眺める通夜の席 秋蛇の板塀打ちて逃げにけり 赴任地に腰据ゑて見る初紅葉 御供物のどら焼賜ふ秋寒し 千 恵 子 秋寒し僧の出てくる骨董屋 美しき人の訪ひ来て紫苑かな 穴に入る蛇の眼の眠たかり 初紅葉拾ひて林ぬけにけり 法 弘 石置いて渡る谷川初紅葉 ため息の似合ふ女に紫苑咲く 秋寒し花札の字のあかよろし 博 道 何事もなかりしごとく蛇穴へ 紫苑花も咲き戸惑ふ日よりかな 秋さむしやや足ばやのとおり道 |