兼題 石蕗の花 海鼠 冬隣 席題 当季雑詠二句 |
東 人 海鼠喰ふ蘊蓄深き貌をして 神の留守白紙で戻すアンケート 茜さす陽に満開の石蕗の花 楢の根の榾火を埋め冬隣 風に飛びやすき葉漏れ日白障子 法 弘 沖晴れて徐福の墓の石蕗は黄に 水槽になまこ飼はれて裏がへる 地球儀をゴミと出す日や冬隣 夜食たのしパジャマの柄に白き象 街風にときに棘あり冬隣 千 恵 子 漱石の脳味噌しろじろ冬薔薇 石段のじゃんけん遊び石蕗光る 海鼠喰ふ宿に動かぬ時計かな 腸を抜かれて海鼠干されをり 針山に待ち針いろいろ冬隣 義 紀 石蕗咲くや良き同僚で良き父で つるかめ算解けぬ吾子なり冬隣 噛み合せ悪しき入れ歯や寒海鼠 頬赤き兄と弟冬隣 黒白のつかぬ世なりき干菜汁 石蕗をコップに活ける宿の朝 |
美 子 寒海鼠噛み逡巡する思ひ 冬隣畳鰯の目が光る 白蓮の芝居見に行く年の暮 冬隣外来受付より入る 白張を下げたる門に石蕗の花 白 美 指先に残る白墨冬日向 掌で量る封書の重さ石蕗の花 たなぞこの力を緩め海鼠揉む 窓越しにブリキの玩具冬隣 風強き岬の岩に石蕗の花 利 孟 風に鳴る鎖の樋や石蕗の花 盗み喰ひして酢の味の海鼠なり 冬隣なべて瓦の映画村 薬草と煮て陽と海の香の海鼠 冬隣り忍者の顔の化粧焼け |
希 覯 子 赤札の衣料吊され冬近し 朝寒や糊の白衣に手を通す 花石蕗ややりくり長屋八十年 海鼠腸の器ぐい呑み似なりけり 身構へしビルの出口に冬近し 海鼠選る一ぱい二はいと声かけて 萩 宏 故郷を離れ海鼠の味遠し 獲物追ふ鷹の眼光白き襟 機関車の白き煙や冬近し |