兼題 灰色のロシア 青のアメリカ 赤の北海道 黄色の東京都 紫の茨城県 |
東 人 銀鼠の寒月光やバイカル湖 むらさきの峰より筑波颪かな 赤門へ並ぶ立看銀杏散る 流氷に赤き陽の落つ能取かな 蕎麦喰うて冬青空の摩天楼 利 孟 銀鼠のコザック帽や大地凍つ 「数寄屋橋ここにありき」と石蕗の花 ドル紙幣に漉かる青糸竜馬の忌 味付けはせうゆと頼み鮟鱇鍋 厚岸や大蠣を焼く磯焚火 白 美 葉牡丹の芯の紫鹿島灘 凍港を守る紋別の赤灯台 凍雲や香月泰男の画布埋む ジージャンの短き裾に羅府の風 日暮里の坂で山吹帰り咲く 希 覯 子 難讀の蝦夷の地名や七かまど 黄落や鳥糞浴びしロダン像 竜の玉日本外史を編みし庵 青年期敵は米英開戦忌 シベリアは灰色の空雪眼鏡 |
法 弘 冬晴や海より入る紐育 二風谷は風の哭く谷ななかまど 黄水仙恋の銀座で買ひにけり 銀鼠の襟巻岡田嘉子かな むらさきに皸裂けて筑波の子 義 紀 ウォッカ飲む暖炉の灰を掻きながら 沢庵漬洗ふ銀座の女将かな 冬晴や運河に映る赤煉瓦 紫苑咲く茨城県庁官舎裏 摩天楼越しの青空スケート場 美 子 インディアン水車に鮭の腹赤し 冬青空女神の燭が突刺さる 病める子ら泣かず原子炉立つ凍土 イチョウ落葉カントを学ぶ僧のあり 西山荘紫紺に暁て蒟蒻掘る 千 恵 子 ナイアガラ青引き緊めて冬の風 丹頂の来て湿原の華やげり グレー淡き瞳に冬帽子ソルジェニツィン 寒気来て筑波嶺紫染みにけり 電飾の東京タワー師走入り |
京 子 秋天の青吸ふ河や大峡谷 「巨峰」もぐ牛久の里の昼さがり 灰色の眼光れり大イコン 通り過ぐ廃鉱駅のななかまど 黄金波小江戸に残る米どころ 萩 宏 紫のジャージのラガー遠筑波 人参を喰らひ国後蹴つとばす 曇天にユーラシアかな山眠る イエローのカヌーを漕ぎし多摩の冬 ロッキーの青き湖畔に鷲が舞ふ 翁 莞 笹葉舟紫紺のかぶり漕ぐ乙女 摩天楼下飛ぶヘリや冬青空 灰色の旅の春泥チェーホフ忌 浅草の笛の黄色音師走かな 網走の原生花園冬夕焼 |