平成8年新年句会 兼題 百人一首本歌どり |
東 人 鎮魂の朝に霜おく神戸かな 久方の雲居にいどみ武将凧 弱りもぞして餅減らす三日かな 白雪の夜や呑みあます吟醸酒 そののちの除目は知れず実朝忌 白 美 初便り雲居に浮かぶ友の顔 祖は八幡海人の小舟に初茜 初晴や淡色好む内親王 初東風を渡せる橋に島田髷 山の尾にスキーの佇ちて朝ぼらけ 法 弘 後朝や雪は吉野に舞ふころか 捨小舟水漬く渚や実朝忌 白波のちぎれちぎれに冬鴎 長らへてけふ風に散る枯れ芙蓉 渡り廊をねずみす走る霜夜かな 京 子 沖へゆく小舟巻き取る冬の霧 降りやまぬ雪を肴に大吟醸 雲居漏る薄き陽の色雪時雨 人の居ぬ浜白々と寒の月 雪橇の鈴渡り来る「忍ぶ川」 |
希 覯 子 鵲や注連貰ひする肥後童 寒灸や弱りもぞする盆の窪 患者診て常にもがもな医務始め 妹を姉とまがひぬ小正月 大寒や有明の月摩天楼 千 恵 子 沖を指す一丁櫓の舟に冬日照雨 欄干の影しめらせて霜の橋 西行に捨てし恋あり雪女郎 鎌倉は谷戸多き町藪椿 玉石を踏む初草履紅鼻緒 義 紀 世の中に義理立て始め事始め 外房の沖つ白波冬の虹 朝刊を配りし跡か霜白し ビル街に降れる白雪疾く汚れ 美 子 母の声常にもがもな大旦 血縁の絶えなば絶えね三ヶ日 初日射し沖つ白波渡り来る 有明の月を見てより受験生 鵲の渡せる橋や初参賀 |
萩 宏 渚こぎ初日を拝む木場の海 朝ぼらけ道着冷たき初稽古 白波にボード漕ぎ出す冬の海 新年の客が辞さずに夜ぞ更けり 賀状絶えなば抹消の住所録 伸 作 生くるとは忍ぶることぞ日記買ふ 窓におく霜に文字書き朝ぼらけ 襟巻きの雲居にまがふ成人式 松かざり降れる白雪払ひのけ 渚漕ぐ釣り舟ぽつり寒風に 立ち小便弱りもぞする冬夕焼 利 孟 降りつみし雪の鳴り出す夜更けかな 球を追ひ駆け出す犬や若菜摘む 紀州より安房の由良へと春の濤 靴底の黄色のラベル春の野へ 健 次 竹弾け降れる火の粉やどんと焼き 渚より焚火へ駆ける寒泳ぎ 初神楽大人にまがふ子供舞ひ 初鏡白きを見れば気が急かれ 火も弱り笹竹差し出すどんと焼き |
翁 莞 鎮魂へ忍ぶることの初御空 友来る夜の更けにける年酒かな ふるさとに降れる白雪母恋し 世の中は辞任破壊の去年今年 大雪に弱りもぞする靴選び |