兼題 余寒 若布刈 椿 席題 目刺し |
東 人 撓らせて肩で鎌引く若布刈舟 椅子固き珈琲店の余寒かな 椿落つ座敷牢めく皇女の墓 酔ひ醒めの看板間近目刺焼く 杼を飛ばす紬の織り子節の忌 法 弘 余寒なほひきしぼりては鳴る時計 目刺し焼くセリフやさしき小津映画 赤椿膳所の城門錆びて古る かくれ住むやうに開く窓牡丹雪 沖へ飛ぶ篝の火の粉和布刈舟 利 孟 若布刈女の靴の荒縄鎌で解く 冴返る刃を添へて剥ぐ魚の皮 崖を打つ土佐の寄せ波紅椿 濡れた手で拭ふ飛沫や若布刈人 伸 作 駅長の夜汽車見送る余寒かな 大橋を水面に映し若布刈舟 口淋し目刺しあぶりて猫と分け ひざあはせ答案用紙待つ余寒 日だまりにこぼれる花弁紅椿 |
白 美 漆黒の大地の吐きし紅椿 椿満つ地積は猫の額ほど 一節の短き指の和布刈かな 妻妾が荷を持ちあひて余寒かな 美 子 じふじふと目刺しの皮の噴き上がる 春の沼横目に家を買ひ捲ね 余寒かな乗り換へ駅で飲むココア 担がれし椿の束や競りの声 船舷に妻の休らふ若布刈舟 希 覯 子 和布刈舟嫁姑は師弟仲 傘立にステッキを差す余寒かな 埋め戻す発掘古墳椿落つ ほほざしの五連の目刺し粒揃ひ 子と丑の祈願の絵馬や梅の宮 武 甲 終バスを待つ人の背に余寒かな 若布刈る海女の破顔の浮上せり 白椿にはか庭師の「はるみ節」 |
千 恵 子 宇宙へのロケット点火椿落つ 竹串を抜かれ目刺の目の昏さ 舷の傾ぐにまかせ若布刈舟 散薬をこぼして母に余寒かな 野葡萄の蔓ふくらみて冬陽かな 京 子 若布刈箱の眼鏡の浮き沈み 筆走る音かつかつと初句会 竹林に高々と咲く藪椿 春寒し河原の石も白々と 底冷えに耐へて出を待つ鬼やらひ 義 紀 四代の女系家族や椿咲く 特急の影移り過ぎ若布刈舟 西日射す軒に干されし若布かな 幼児の赤き手袋余寒なほ 萩 宏 皮の青海の青汲む目刺しかな 四駆車の轍幅取る雪山道 水半球縁の縁にて若布刈舟 俯いて動かぬ視線に落椿 違へたり薄き肌着の余寒かな |
正 玄海や波に諍ふ若布刈舟 吟醸酒何は無くとも目刺しかな 母死して庵の余寒厳しけり 早春や南アルプス無人駅 紅椿巴里より友の便りあり 健 次 椿落つ庭によちよち歩きの児 冴え返るMジョンソンのシュートかな 逃げる子と追ふ親ありて余寒かな 頭より目刺食む親あきれる子 翁 莞 着流しの足に余寒の纏ひけり 海女の勘波間の技の若布刈かな 漁火を数へしあとの懐手 参道に明るさ添へて落ち椿 |