兼題 霾 リラ 涅槃一般 席題 寄居虫 当季雑詠 |
東 人 台詞入る隙なく嘆き涅槃絵図 ぐいと抜けするりと入る寄居虫かな 青き踏む蹠に目鼻あるごとし 別れ来し闇の遠のきリラの花 霾るや絵馬に村上水軍旗 千 恵 子 涅槃図の象の抜け出す堂の闇 凶と出しコーヒー占ひ鳥帰る のぼりては落つやどかりの日がなかな 霾や日は暈を着て崩れたり 風にリラ信濃に空の透き通る 希 覯 子 啓蟄や妻を師とする厨ごと 寄居虫の叱咤を受ける歩みかな つちふるや大内山を玻璃戸越し リラの窓点滴時を刻みをり 涅槃図や絵解きの竹にゴムを被せ 白 美 霾るやひとりで帰る転入生 あるだけの服を着換へてリラの花 濡れ縁で背のびする猫涅槃の日 春浅し手帖は札所印ばかり プラスチック蓋を背負ひて寄居虫疾し |
翁 莞 涅槃会の歩幅大きく僧の列 寄居虫の逃げる早さも波が呑み 霾る日閉ぢし障子の指の跡 青空の樹氷に掛かる小さき虹 ライラック群がる園の香り風 萩 宏 霾天に羊追ひたる大地の子 霾や朽ちし校舎の風見鶏 涅槃会の夜もなほ探るひとの肌 寄居虫や大波小波に目もくれず 待ち人の来ぬ駅前にリラの花 利 孟 釘切りて終る装蹄リラ香る 涅槃図の傾げば象の垂る頭 霾や音出し詰めの調律師 咳き込みて鳴る時計台リラの花 涅槃図の襞のゆたかに紅衣 美 子 流さない泪うす塩涅槃西風 リラの香に相応しき人勇退す 寄居虫の戦ふ構へ大形に 納税者春の埃の中を来る 霾れば藁の匂ひの美少年 |
京 子 桜東風湖面の影を揺らしゆく 抱きし子と香り分け合ひリラの花 手枕に眉宇のやさしき寝釈迦かな 家移りの荷を見送りて黄沙かな 正 リラ薫る北の都の遠き日々 新墾の霾る丘も分譲地 涅槃なほ遠くにありて人恋ふる 鍵盤の音きらきらと春の水 寄居虫に伸び行く孫を重ねけり 法 弘 涅槃会に不参の猫も方舟に 口笛の似合ふ街角リラの花 品書きにたらの芽は無し然れども つちふるやあゝ銀幕の李香蘭 大津絵の鬼のおどろく春の雪 伸 作 カンバスに香り描かんリラの花 猫をのせ長イスに伏す涅槃かな 富士を見る駿河の浜におにやどり この国の来しかた思ふ黄砂かな 九十九里波打ち寄せよおにやどり |
義 紀 寄居虫や転居続きの我が生涯 転勤の友を見送り涅槃西風 雪達磨三日の後の泣き笑ひ リラ咲ける街に旅立つ夜明けかな 霾るや空狭き高層ビル街に |