兼題 風船 山葵 康成忌 席題 花の雨 |
東 人 根を噛みし小砂を流し花山葵 時間割あれこれ変へて花の雨 風船を抱いて心音確かなり 風船を配る両手で叫ぶ子へ 子の数の長靴干され康成忌 千 恵 子 水音をたどり隠田山葵生ふ 下校子の傘くるくると花の雨 大泣きに泣いて風船離さぬ子 行き戻り花菜迷路の思案かな いつまでも動かぬ鴉康成忌 法 弘 花莚ひとり待つ間の文庫本 花の雨どこか嘘めく私小説 峠道九十九に折れて康成忌 恋風船交互に吹いてふくらんで 花山葵夫婦寄り添ふ道祖神 京 子 鶴を折る夜のしじまや康成忌 一叢に水のつまづく山葵沢 先細る簗を構へて室見川 ぷくぷくのおとびに結ぶゴム風船 |
希 覯 子 花種を下げし風船拾ひけり 花の下くぐりし傘を車内まで 萬葉歌現代假名に康成忌 諸葛菜鉄砲垣の裏表 山葵田や黒のネットを片寄せて 武 甲 喧噪の失せし城址や花の雨 「背くらべ」競ふ山葵や沢の音 渓流の音色を変へて鳥交る 紙風船飛ばす真顔の薬売り 薄明の分水嶺や康成忌 義 紀 むづかる子たちまち破顔赤風船 水たまり絨毯となり花の雨 来し方にトンネル幾つ康成忌 花疲れ人の乗り込む終電車 訪ふ人の絶えたる谷や山葵咲く 正 風船を持つ幼な児に力あり この國の言葉如何にも康成忌 時差のまだ残る目覚めや花山葵 イグアスの滝の飛沫に蝶飛べり |
琢 磨 獄中の子と会ひし母花の雨 風船の糸追ひかけて夕日かな 日本語を恋しと思ひ康成忌 うふうふと恋風船にふきこんで 掌の文字なつかしく康成忌 白 美 手のひらに折鶴載せて康成忌 兄妹争ひあつてゴム風船 泣き声をのこし風船空に消ゆ 星条旗立ちしリムジン花の雨 上水の水を引き込み山葵生ふ 翁 莞 川渦の伸びを消しゆく花の雨 七滝の宿に繙き花の雨 又一つつく風船に若さ見せ トンネルの天城を越えて康成忌 すべからく冷めたき水や山葵採り 利 孟 復帰訓練の歩のやや伸びて康成忌 空へ出す手紙黄色の風船に 火の匂ひ残りし朝の末黒の芽 啜り切り蕎麦湯の底に山葵の香 出迎への旗駅頭に花の雨 |