兼題 紙魚 洗膾 雲海 席題 日除 |
東 人 狗肉売る店の日除けの青と白 落款印の一画崩し紙魚光る 金時の絵皿の上の洗ひ鯉 炎昼や青磁の罅の割れる音 雲海に坐す峰のなし韓の国 利 孟 雲海を堰きて箱根の山明ける 引き残る皮の光や洗鮎 洗ひ盛る硝子簀子の木綿糸 辻一つ紙魚の加へて大江戸図 いざといふときの早逃げなめくぢら 千 恵 子 紙魚喰ひや句読点なき候文 日覆や一ト日客なき時計店 箸先に泥の移り香洗ひ鯉 雲海へ一閃の朱や声上がる この頃の日の経つ早さ四葩咲く 笙 ぐり石で止める日覆法衣店 時折は歩のにぢりゆく紙魚の跡 雲海を突き抜けて立つ大没日 大西日ビル満面を鏡とす 洗い鯉そがれしままの曲り癖 |
希 覯 子 水替へも看護のひとる水中花 日除け巻き銀座に夜のとばりかな 伝来の三體本や紙魚のあと ギヤマンに盛られし鯉のあらひかな 雲海や北極点過ぐとアナウンス 白 美 雲海やまたも運ばれ機内食 珈琲の香りのこもる日除けかな 輝けるものは紙魚のみ古官舎 噂立つほどのことなし洗ひ鱧 「かあさま」に聞きし運針桜桃忌 法 弘 雲海や黄山に座す石の猿 元禄御畳奉行の日記紙魚は食ふ 清張のギョロ眼なつかし紙魚の穴 一刷けの雨過ぐ庭や洗ひ鯉 新宿の女がくぐる茅の輪かな 正 赤い日除青い日除や巴里の街 雲海を枕にしたり空の旅 紙魚の書の並ぶセーヌの晝下り 帰り来し子と一献の洗鯉 マロニエのふさふさ揺れて乳房かな |
美 子 肝腎の一字喰はれて紙魚憎し 洗ひ鯉定食頼む日本海 雲海や友の横顔素に戻る 越し方を思ふ雲海眺めつつ 黒塚の岩屋見てきて洗膾喰ふ 健 一 雲海のふはり峰越しのたり落つ 縮れ身に舌のざらつき洗鯛 紙魚あとに本の整理となりにけり 初夏の渓谷水の私語絶えず 梅 艸 洗鯛ネクタイシャツと解きけり 話やや込み入って水漬く洗膾かな 雲海や月下に纏ふアマルガム 黄表紙の穿孔古き紙魚の恋 |