平成八年忘年句会 兼題 酉の市一切 千鳥 白菜 席題 冬銀河 |
東 人 白菜の尻切り揃へ縄を打つ 雲一つ群に遅れて冬銀河 手締より小さき熊手を買ひにけり 砂にこぼす涙かたまり夕千鳥 中岳に寒満月ののこりけり 希 覯 子 白菜の半身が見せる葉の迷路 真向ひに冬銀河あり利根渡る 御利益の薄き熊手を納めけり 名水をもて白菜の清めらる 荒川に潮の干満千鳥啼く 利 孟 人多き方へと熊手吟味かな 二、三枚剥き白菜の荷を造る 蔦紅葉封ぜし天の岩戸かな 浪飛礫つひばむやうに群千鳥 篝火の煙渦巻き冬銀河 千 恵 子 息吸へば胸に鳴る音冬銀河 かつがれて熊手のおかめ恥ぢてをり 一皮を剥かれ白菜輝けり 走り行き走りとまりて磯千鳥 方寸の土も見えずに敷落葉 |
笙 飛び立てば投網のごとく夕千鳥 お多福の引き目やさしき熊手買ふ 沸き上がる一本締めや熊手市 高塩を振って仕上がる菜漬かな 白 美 白菜のおしやれピンクの帯締める 佳き人の手のひらに入る熊手買ふ 懐しき見知らぬかの妻歳暮の字 少年ら笑みてパン食み川千鳥 冬銀河阿吽の獅子を照らし出す 武 甲 露天湯をひとり占めして冬銀河 上げ潮の開運託す熊手かな 時を告ぐミッキーマーチや夕千鳥 井戸端の白菜談義古長屋 法 弘 妻に隠すローマ字日記冬銀河 白菜の荷車去つて残る鶏 熊手買ふ母に糊口の小商ひ 高張や雨となりたる酉の市 帰心あり浜に千鳥の足の跡 |
正 大熊手隣に招き猫座り 南極の空にも見たり冬銀河 凛として山麓の村冬構 直送の白菜土の匂ひする 迷ひ子やいづれの浜の友千鳥 健 一 冬銀河しばらくぶりの里帰り 白菜の尻山積みの厨かな 浜千鳥過ぎ行く声の片情け 手に品のあれこれやがて大熊手 日溜まりにどこか艶めく柿落葉 |