第88回原宿句会
平成8年12月5日

   
   平成八年忘年句会
兼題 酉の市一切 千鳥 白菜
席題 冬銀河


            東 人
白菜の尻切り揃へ縄を打つ
雲一つ群に遅れて冬銀河
手締より小さき熊手を買ひにけり
砂にこぼす涙かたまり夕千鳥
中岳に寒満月ののこりけり

            希 覯 子
白菜の半身が見せる葉の迷路
真向ひに冬銀河あり利根渡る
御利益の薄き熊手を納めけり
名水をもて白菜の清めらる
荒川に潮の干満千鳥啼く

            利 孟
人多き方へと熊手吟味かな
二、三枚剥き白菜の荷を造る
蔦紅葉封ぜし天の岩戸かな
浪飛礫つひばむやうに群千鳥
篝火の煙渦巻き冬銀河

            千 恵 子
息吸へば胸に鳴る音冬銀河
かつがれて熊手のおかめ恥ぢてをり
一皮を剥かれ白菜輝けり
走り行き走りとまりて磯千鳥
方寸の土も見えずに敷落葉

            笙
飛び立てば投網のごとく夕千鳥
お多福の引き目やさしき熊手買ふ
沸き上がる一本締めや熊手市
高塩を振って仕上がる菜漬かな


            白 美
白菜のおしやれピンクの帯締める
佳き人の手のひらに入る熊手買ふ
懐しき見知らぬかの妻歳暮の字
少年ら笑みてパン食み川千鳥
冬銀河阿吽の獅子を照らし出す

            武 甲
露天湯をひとり占めして冬銀河
上げ潮の開運託す熊手かな
時を告ぐミッキーマーチや夕千鳥
井戸端の白菜談義古長屋


            法 弘
妻に隠すローマ字日記冬銀河
白菜の荷車去つて残る鶏
熊手買ふ母に糊口の小商ひ
高張や雨となりたる酉の市
帰心あり浜に千鳥の足の跡

            正
大熊手隣に招き猫座り
南極の空にも見たり冬銀河
凛として山麓の村冬構
直送の白菜土の匂ひする
迷ひ子やいづれの浜の友千鳥

            健 一
冬銀河しばらくぶりの里帰り
白菜の尻山積みの厨かな
浜千鳥過ぎ行く声の片情け
手に品のあれこれやがて大熊手
日溜まりにどこか艶めく柿落葉