第96回原宿句会
平成9年7月1日 赤坂アビタシオンビル

   
兼題 端居 白玉 天牛
席題 海開き


  東人
巫の笏もて泳ぐ海開き
白玉や古地図に墨の行者道
天牛の角つき合うて瓶の中
日傘差す主は和服着給へり
前山の風にこごえし端居かな

  白美
海開き足首飾る金鎖
白玉や金箔散らすお品書
端居して想ひのたけは闇に沁む
夕暮れて隣り家訪ふ釣忍
天牛やきりきり鳴いて空の鉢

  利孟
天牛の攀ぢては鳴らす窓硝子
風捉へやすきパレオや海開き
陽に縮み風に細りて干しかんぺう
水で艶くれては丸め白玉よ
値踏みする目で人を追ふ端居かな

  笙
切れぎれの野球中継端居かな
梅雨晴れやようよう決まる出勤着
鳴き交す声の途切れず遠蛙
ひと所くびれのありて鮎の川
白玉のつつましやかな甘さかな

  千恵子
海開き祝詞は波にのまれがち
風だけに心許して端居かな
白玉のつるりと滑る喉の奥
豆腐売る声の間延びや梅雨晴れ間
天牛の鳴くやギイギイ國返る

  希覯子
芙美子忌や瀬戸内海は橋伝ひ
白玉や益子の壷の和三盆
海開き縄囲ひして地割り済む
夕端居振子時計の刻告ぐる
発見は天牛虫のジュース好き

  正
端居してグリークを聴く今宵かな
新聞に髪切虫や胸騒ぎ
鈴の音やチロルの丘の青嵐
初恋の破れし浜や海開き
白玉や肌柔かき京女

  健一
天牛の動く大あご飽きぬ暇
白玉の一匙ごとに震へをり
白日傘まとめる髪の白リボン
旅ごころ空港ロビーの端居かな

  健次
子供らの遊ぶ声なき端居かな
網寄せて天牛虫の角動き
嬌声やしらたまひさぐ店があり