第202回四天句会
平成18年4月17日

   
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 美子
若布刈鎌海の光を刈り進む
肉厚のムーアの女体春の昼
三尺の童子の言葉殖え穀雨
「愛国」といふ言回し残花かな
更年期といふ身操り木の芽和

 利孟
丸き背に負ひて水引く若布籠
春昼の千本鳥居の朱き闇
穀雨かな逆手の鎌を研ぐ砥石
万愚節息を吹き足す救命衣
一抓みづつが刻まれ木の芽和へ

 直人
野を焼きて戻る男の眼の修羅
田も畑も草に埋もれて穀雨かな
眉太き男の咀嚼木の芽和え
眉月や小さき浜に干す若布


 武甲
食堂の卓に酢、醤油若布刈る
貨車去りて穀雨の中の単線路
宿坊に無為の逗留木の芽和へ
ほたる烏賊闇に一群浮かび来る


 かめ
積まれたるままに傾ぎて若布刈舟
手捏ねの器に盛られ木の芽和
春障子影に落さる木々の彩
潤ひて穀雨の茎の透きとほる
春昼の急くこともなき砂時計

 白美
木の芽和え京都山里竹林
菜園の菜の若緑穀雨かな
招魂祭塩を一舐め力士起つ
春昼のややたつぷりの服選りて
湯のなかで若布たちまち青変化
 正
寺田屋の暮春の闇の刀疵
若布干す浜に腹這ひ読む歌集
馬失せし小諸馬子唄木の芽和
バケットをかじる公園春の昼
待ちわびし天の恵みの穀雨かな

 恵一
ぼろぼろの軍旗のごとく若布干す
あたたかき酒のまづ来て木の芽和へ
音もなく畝削る鍬穀雨かな
てのひらに受けてひえびえ穀雨降る
春昼の虫の羽音の往き戻る

 里佳
旅先の親の饒舌木の芽和
艶やかに庭濡れそぼつ穀雨かな
ゆらめける和布に寄りて稚魚の群
我が眼に宿り躑躅の紅の色