第289回四天句会
平成25年9月17日(火)

   
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兼題 鰯雲 胡桃 椋鳥
席題 守宮



  利孟
胡桃割る秘境のモルト啜りては
闇を身にまとへるままに守宮落つ
台風来遅延二分といふ列車
夜を籠めて椋鳥のざはめく一里塚
蒼穹の青の斑入りの鰯雲

  武甲
号外のインクの匂ひ秋の朝
空を突く古城の塔や鰯雲
お手塩に載せて一品胡桃味噌
椋鳥や人知と競ふ根比べ
秋の虹五輪の決まりし街にかな

  比呂志
京壁のしみとなりたある守宮かな
酒蔵の樽の泣き声風の盆
段々に並んでいるや鰯雲
明けやらぬ朝をさはがせ椋鳥の声
掌に二つもて割る胡桃一つかな

  恵一
守宮落つビジネスホテルの壁剥がれ
人類の生誕の日や鰯雲
秋涼し運河に響くカンツォーネ
金槌を振り上げ胡桃手討ちとす
椋鳥の集まり来たる一樹かな

  あやの
隣人の問はず語りや鰯雲
椋鳥の群の一樹に鎮もれる
よき音のしさうな胡桃選りて割る
石塀の続く坂道星月夜
戸袋の傍に動かぬ守宮かな

  義春
鰯雲年も半ばをはや過ぎて
椋鳥の塒の大樹夜の更ける
胡桃割るほんの僅かの実を残し
松茸の移り香を得て森の土
手応へも無き柔らかさ守宮かな

  雨竜
鐘の音の響けば落ちて鬼胡桃
うたかたの寄る辺なき身やいわし雲
軒深き古屋の壁の守宮かな
渇水に蛇口を捻る夏の音
むくどりのライブチケット売れ残る