兼題 去年今年 初茜 雑煮 |
利孟 かな二文字半紙をうめてお書き初め 和菓子舗の小暗き灯り松過ぎぬ 初茜釣瓶の水に浮かぶ湯気 吹き溜まる塵よ芥よ去年今年 初寅や置屋芸妓の薄き紅 あやの 初書きの小筆で記す見舞状 山海の幸の五色の雑煮椀 秘密なき夫の妻で去年今年 福引いて鐘で囃さる日本橋 直線の家並に車線初茜 武甲 平積みのままに書の増え去年今年 菜と芋の土の旨みの雑煮かな 暁の暗さの底の初茜 初詣終へて鳥居を入れ自撮り 重装備して出る散歩寒に入る |
義春 正月の鯉泰然と沈みをり 世の中に多きしがらみ初茜 去年今年闇の東名道西へ 煮くづれて丸か四角か雑煮餅 書初や墨たつぷりとふくませて 雨竜 故郷の匂ひの出汁の雑煮かな 去年今年大谷寺の鐘の音 野良猫の日蔭の声の師走かな 泥付きの大根束で売られけり 号砲の烟と思ふ初茜 比呂志 椀の蓋とれば雑煮の湯気ゆたか 街並みの眼下に染まり初茜 書初や余白に小さき文字一つ 父のオペ終へて看病去年今年 松過ぎて退院の日の決まりけり |
翠江 野良猫の日蔭に声の師走かな 石段を踏み出す足も去年今年 山巓に点の滲みの初茜 雨音も知らぬ間に消え今朝の雪 |