第５９回　平成１３年４月２８日


へんみともこ
薫風や溝蓋鳴らし登校す
恋猫や顎まで浸かりしまひ風呂
記念樹の支へ外され春闌ける
行く春の波紋に透ける緋鯉かな

三澤郁子
山羊の子の脛まで隠るげんげ畑
世界遺産の森に汲む水風薫る
行く春や扉の閉づ自動改札機
つながれて猿の多芸や花吹雪

片山栄機
山桜若き巡査の肩に散る
殉職の長き葬列春逝けり



川村清二
薫風や家族の囲むバーベキュー
振り返り振り返り行く桜道
鵜の狙ふ遡上しきりの鮎の群れ


田中鴻
行く春の畑仕事の切りもなし
伸び放題の垣根にからむ花通草
初孫の入学といふ写真かな

栃木昭雄
薫風や胸ふくらませ嬰子眠る
紺碧のパラグライダー風薫る
塗りつぶすマークシートや風薫る
行く春や雨したたらせ巡査来る

永松邦文
大笊に盛られ捨て値の春大根
ゆるがざる儀仗の漢さくら散る
行く春やお取り寄せしてオイキムチ
薫風や品定めするクラブタイ

福田一構
朝稽古終へししづけさ庭桜
板前の鷲掴みして桜鯛
尼寺跡の薄墨桜散らす風
遠山のはろばろ煙り山桜

堀江良人
遠山にかかる浮雲春うらら
錆色の山明るくしこぶし咲く
刈り残る山吹の咲く競売地
遠山を収めて光る水田かな