第60回 平成13年5月26日
アーバンしもつけ


川島清子
素足の子風切る螺旋のすべり台
くちなしや記憶のずれに夫退かず



へんみともこ
叱りたる素足の子抱く胡坐かな
若竹の影の縞なし仏足石
せせらぎに飛び石ふたつ九輪草


福田一構
みちのくの牡丹くづるる夜半の風
薫風や先師遺愛の太木太刀
古里の朽ちし旧家や梅実落つ


石塚信子
鏡中に選るイヤリング青田風
お茶の間に素足の集ふ日曜日
木道を降り木道へ菖蒲園
誤字脱字正す原稿蔦若葉

片山栄機
職辞すと決めたる思ひ青嵐
春昼や古きレコード聞きふける
ペディキュアの素足投げ出す昼電車
みどりなす風の広がり鯉のぼり

川村清二
釣り糸を流し流して山女追ふ
だうしても履かず嫌ひの子の素足



田中鴻
靴持ちてワイキキ浜の素足かな
その丈の親より勝る今年竹
低頭し尾をあげ叫ぶ閑古鳥


とこゐ憲巳
笊の目の跡で切り分け冷奴
若竹の弱き青さや命生る
濡れ縁に素足となりて里帰り
冷酒やころころと焼く牛の肉

栃木昭雄
若竹の雨にかがやく立志式
ジャングルジムを自由自在に素足かな
車椅子の母口ずさむ「夏は来ぬ」


永松邦文
青葉風われらの句会六十回
今年竹小枝のゆれの風まかせ
ポチとタマ末席にゐるバーベキュー
香り立つオールドローズ道の駅

会田比呂
長き名を死して賜はり夏椿
釣果無き夕べに放つ囮鮎
塞きとめて素足の探る魚の穴
若竹や触れきて風の匂ひ立つ

柏崎芳子
見はるかす家族総出の植田かな
少女行く弾む素足のたのしさよ
母見舞ふ小道に流るる新樹光


堀江良人
昼刻の水田に残す耕運機
雪渓の日毎に細る那須連山
早苗田や鏡の如く月に照る
若竹の葉を打つ雨の音細る

三澤郁子
浜風に素足の総身統べらする
D51の煙蛇行し麦の秋
谷若葉長き汽笛の尾がこもる
甲高き弥勒菩薩の素足かな