第９９回 平成１６年１１月１４日
蔵の街・栃木 吟行会
☆ 初霜や入院支度の旅鞄
☆ 枇杷の花塀を切り取り裏出口
☆ 胸元の蕾ほころび菊人形
秋深し頭皮を走る整髪料
菊日和旅に祈願の飛不動
木の葉降る寺に祀らる鬼の像
小春日や広場に磧の波模様
注解を頼りに読書夜の長き
比呂
☆ 七五三社殿神鼓に揺れ通し
☆ 石蕗咲くや波の模様の石畳
鈴の緒の失せて落葉の屋敷上
鶺鴒の発ちては歩く綱手道
茶の花や千年鬼を祀る寺
綿虫や軒より暮るる蔵の街
☆ 小春日や金の髭おく錦鯉
柿熟るやおたすけ鞍の火防甕
三鬼尊眼をひんむいて黄落期
秋の暮れ火の無き煙草吸ふ芝居
味噌うどん熱し暮秋の蔵の街
秋草の庭に水琴窟の竹
清子
☆ 大嚏ひぎきて悲話の蔵芝居
隆盛のかくも家紋の皮羽織
綿飴とともにおぶはれ七五三
ロボットの婆の弾く三味返り花
三色の鯉の尾鰭で掃く落葉
信子
☆ 繋がれて昏るる平舟冬の川
勤皇の志士翻す菊羽織
冬紅葉照らせる村の奥の墓
鴨の群寄りては離れ巴波川
蔵の街時雨るる山を遠くして
新駅舎前の大路と紅葉山
石階に菊の袖引く七五三
千歳飴親に預けて晴着の子
踏んばりて衣装重たき菊の武者
帯に背を引かるる晴着七五三
ミヨ
添ひし木の紅葉明りや石灯籠
秋日入る木の間隠れの置灯篭
修正や板塀の反る屋敷跡
奥へ入る土間の梁そぞろ寒
手の跡の残る玻璃戸や尉鶲
良人
立冬や浅瀬に溜まる鯉の稚魚
軽鴨や隊形変換して進む
たおやかに綱手の道の枇杷の花
石蕗の花寺に赤青黒の鬼
鴻
秋麗ら川に張り付く蔵の街
三匹の鬼祀る寺秋深し
菊薫る巴波に川に鯉揺らぐ
瓦斯灯をともす旧家や秋深し
一構
花八手干支をめぐらす石灯籠
神の留守水琴窟の竹で聴く
白壁の揺らぐ川面や木の葉髪
昭雄
三色の鬼座す古寺やうそ寒し
散り銀杏貝の鐙に金の鈴
幸子
もみぢ葉の水面を分けて鯉の鰭
利孟
山茶花や石の井桁の廃れ井戸
柚子熟るや火袋かたぐ石灯籠
山茶花や四方に木戸の麻御殿
破れ芭蕉坐して憤怒の鬼の像
空也の忌煮込みうどんに椀添へて
長火鉢生き人形の膝の猫
焼き板の塀の荷揚げ場柳散る