第100回 平成16年12月23日


     耕
☆ 襟巻や一歩に動く千の星
  方耳に僧の衣擦れ冬の鵙
  売り声にはとの飛び立つ飾売

     聖子
☆ さざんかや反故紙に試す墨の色
  もみじ葉の色褪せ積もる無人駅

     敬子
  家系図の紙のセピアに年惜しむ
  嘘をつく子の饒舌にのつぺ汁
  天領の山の幾重に冬茜
  寄せ鍋や恩師の白き長者眉

     登美子
  枯菊に種火のごとき朱残る
  呼べば来る白鳥の首たくましき
  茎細く伸ばして紅の冬薔薇
  金平糖奥歯で割りて年惜しむ

     一構
  モンブラン凍て今昔の日を返す
  更けし夜の裸電球飾売
  北の海凪て肌さす寒気かな
  湖を渡るカリヨン小春かな

     鴻
  畑仕事終へて炬燵に歓談す
  和服着て合はす鏡に懐手
  一列に並ぶ学童息白し


     清子
  ビルの間の一隅占める飾売り
  大屋根は庄屋の構へ柚子光る
  書き込みのあふるる暦年惜しむ

     ともこ
  一斗缶蹴りて煽る火飾売
  冬の朝ひとつのくづる目玉焼き
  冬うらら空へ羽ばたく大欅

     信子
  風呂吹きの甘き湯気食む至福かな
  朝からの威勢ひねもす飾売
  極月の知らぬ同志の足湯かな
  庭箒の尖の掃き癖年惜しむ

     比呂
  積み上げて藁の香青き年の市
  冬立つや母の墓所の外待雨
  藁の香の尊くにほふ注連飾

     芳子
  せはしなき厨の音や年惜しむ
  フク(二九)の日と声を張り上げ飾売
  乳母車押し行く広場冬日和

     昭雄
  自転車の軋みに油年惜しむ
  大声に手締めピアスの飾売
  年惜しむ叩きて合はす鉋の刃


     良人
  掛け声につられ客寄る飾り売り
  背中吹く街路の風に年惜しむ

     憲巳
  餃子の街サンタのピザの配達人

     利孟
  シャンパンの瓶の上げ底聖樹の灯
  客を呼ぶたびに手鳴らし飾り売り
  夜祭や秩父ワインの渋さなほ